I-131 MIBGは神経芽細胞腫に対する内用療法の治療製剤として臨床利用されており、腫瘍細胞内へ集積して殺細胞効果を発揮する。細胞へは細胞膜の単純拡散とneuronal uptake-1による能動的摂取により細胞内に取り込まれ、神経芽細胞腫では60%以上が細胞質内に存在する。本研究は、内用療法の治療効果増強獲得を目的として、プリンアルカロイドの1種であるカフェインの殺細胞効果とI-131 MIBGとの相互作用を検討した。 ヒト神経芽細胞腫由来細胞株SK-N-SHを37℃、5%CO2条件下で培養し、この細胞を24ウェル細胞培養用マルチウェルプレートに1ウェル辺り1×105 cells/ml播き、カフェインを0.1mM、1mM、10mM、20mM、40mMで負荷し、無負荷をcontrolとしてカフェイン投与後3、6、24、48時間後に細胞数を測定した。カフェイン投与後、全実験群において分散分析で有意に差を認めた。Dunnett法を用いてコントロール群と比較を行うと3時間後では40mM、6時間後で20mMと40mM、24時間後と48時間後で10mM、20mM、40mMを負荷した群で有意な細胞数の低下を認めた。この結果から、カフェイン負荷に伴うI-131 MIBG摂取阻害も確認するために、約3.7kBq/μlのI-131 MIBGを1μl投与したものをcontrolとし、カフェイン1mMをI-131 MIBG投与の1時間前、同時、1時間、6時間、24時間後に加えてI-131 MIBG摂取率を測定した。その結果、全負荷群でそれぞれ有意にカフェインによってI-131 MIBG摂取率低下が確認された。I-131 MIBG単独の投与1時間後、非投与群と投与群の間で有意な細胞数の差は認められなかった。 臨床で神経芽細胞腫におけるI-131 MIBG治療とカフェインの詳細機序は不明とされてきたが、今回の研究ではカフェインの投与タイミングに関わらずSK-N-SH細胞へのI-131 MIBG摂取率が低下起きることが明らかになった。今後は、神経芽細胞腫担癌マウスにおけるカフェインの薬物動態をPET製剤を用いて確認する事が必要であると考えられた。
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