研究概要 |
本研究の目的は基礎、臨床において待望される脳深部核、特に治療において標的となる視床やその近傍の核を、臨床用のMRI装置を用いて同定することである。視床内の神経核(亜核)のMRIにおける描出の報告を元に、本年度において複数の被験者に対しMRIの実験を行った。過去に報告(Deoni et al., 2007; Tourdias et al., 2014)のあった亜核間のT1値の差異に基づいて、T1mapにおける視床亜核間のコントラストを参考として、今回は30分程度の撮像を行ったが、この時間では十分なコントラストを得ることはできなかった。同様に差異が報告されているT2mapについては、アーティファクトの発生を抑えることが困難であり、やはり十分なコントラストを得られなかった。T2*mapについても試みたが、これもコントラストは不十分であった。7T-MRIの報告(Deistung et al., 2013)では、磁化率の定量化を試みた画像において一部の視床亜核の描出を認めたため、本実験で用いる装置では限界も予想されるが、今後検討すべき撮像法と考えている。脳の髄鞘イメージングの手法であるSTIR-プロトン密度強調像においては、視床内の白質である乳頭視床路について比較的明瞭な描出を得ることができた。この撮像法や、T1mapの描出に使用したMP2RAGEにおいて得られる画像についても、これらの白質構造について、観測できたため、今後はパラメータの最適化を目指していく予定である。ただし、全ての亜核についての分離は不十分であり、これはアーティファクトや、亜核自体の物理的性質に基づいているかもしれないと考えている。視床亜核には特異的な機能があるとされ、脳機能画像についても考察を進めていく。また、視床には周囲の脳組織から複数の神経線維による連絡があり、これは亜核により差異がある。これらの神経線維は拡散テンソル画像による白質のイメージングにより描出されうるため、この画像の解析も有用になると考えている。
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