研究課題/領域番号 |
24791291
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
下條 尚志 三重大学, 医学部, 技術員 (70410751)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | テネイシン-C / ScFv型抗体 / 虚血性心疾患 / 分子イメージング / SPECT / アイソトープ標識 |
研究概要 |
心筋炎の確定診断は、心内膜心筋生検による組織像で判定され、炎症細胞の浸潤像が検出されるか否かで決定する。しかしながら、当該方法は侵襲性やサンプリングエラーといった課題点が残る。本研究では、虚血性心疾患の初期段階において一過性に発現するテネイシン-C(TN-C)に対する抗体が、分子イメージング診断法に有用か否かを検討している。可溶型一本鎖可変領域断片(scFv)タンパク質を調製するために、まず抗TN-C抗体を産生するハイブリドーマのRNAから抗体のH鎖可変領域(VH)とL鎖可変領域(VL)遺伝子をクローニングした。次に、重複伸長PCRを行い、リンカーを介したVH-linker-VL遺伝子(ScFv遺伝子)を構築し、これを発現ベクターへサブクローニングしたのち大腸菌に導入して発現系の構築を試みた。その結果、微量であるが抗体が発現していることをウエスタンブロッティング法により確認できた。通常の37℃24時間培養に加え、低温培養(25、30℃)も行ったが同等の発現量であった。低発現量の主な原因は、マウスと大腸菌のコドンの使用頻度の相違によるものと考えられる。来年度以降、高発現量が期待され、宿主への毒性やコドンの使用頻度を考慮しなくてもよいRTS Wheat germ(ロシュ社)のin vitro合成系を使用したタンパク質発現系を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度の研究実施計画において、抗TNC抗体のScFv化と発現系の構築を柱として研究を行ってきた。抗TNC抗体のScFv化については、ハイブリドーマからの抗体遺伝子のサブクローニング、ScFv型抗体遺伝子への変換、クローニングベクターへの挿入、遺伝子配列の確認などすべての実験は終了している。発現系の構築においては、研究実績の概要でも述べたように抗体タンパク質が低発現量であったために評価系への移行を取りやめ、さらに高発現量を得るための発現系の構築を目指した。そのため、当初の計画より若干遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度はハイブリドーマからの抗体遺伝子のサブクローニングに始まり、大腸菌を用いた発現系の構築を行ってきたが、本年度はセルフリーや哺乳類細胞など様々な手法で発現系構築を目指す。そのために、現在、抗体の遺伝子配列を再確認し、アミノ酸配列を変えずに哺乳類細胞用のコドン配列へ最適化したプラスミドを構築している。さらに、発現系構築の専門家である研究協力者と密に議論を重ねて目標を達成する予定であるが、それでも十分にタンパク質量が得られない場合は、研究協力者や受託企業へ発現系構築の依頼を要請することも視野に入れている。抗体タンパク質の機能評価で使用する機器や実験手法は、研究代表者が日常業務で操作しているため、すぐに評価実験を行うことができる。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初、ScFv型抗体の抗原に対する結合能の評価を行う予定だったが、24年度中に目標となるタンパク質量が十分得られなかったため、BIACOREによる解離定数の決定、組織内の免疫染色を行うのをとりやめた。その結果、24年度の研究費に未使用額が生じたが、25年度中において目標量に達したのち早々に当該実験にかかる試薬等を購入し、今年度行う予定の研究計画と併せて実施する。
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