研究課題
若手研究(B)
MRIやPETに代表される脳画像研究の進歩は、神経科学や臨床医学の発展に大きく寄与してきた。しかし、ハードウェアや撮像時間の制約に伴う脳画像の信号雑音(ノイズ)は解析や解釈上の障害となっている。このような現状を鑑み、申請者はノイズ除去性能が高い一方、計算コストが高く通常の手法では医用応用が困難であったNon-local means (NLM) filter等の高精度ノイズ除去アルゴリズムをGPGPUで高速化させたソフトウェアを開発した。本研究の目的は、このノイズ除去ソフトウェアをヒトおよび動物の脳MRI・PETに適応し、基礎・臨床応用の可能性を明らかにすることにある。平成24年度では、高性能GPUを有するコンピュータを導入し、現在開発を行なっているCUDA 2.3より4.2に変更の上で、ソフトウェアをバージョンアップするとともに様々な最適化を図った。その結果、181×217×181 voxelの3次元頭部MRI画像に対して113/voxelで3D NLM filterを行った際の処理時間が旧バージョンの7.5秒(0.041sec/slice)から3.8(0.021sec/slice)と約1/2までさらに短縮化することに成功した。これは先行研究でのCPU(Xeon 3Gz×8)処理時間2780秒と比べると約1000倍の高速化となる。さらに、上記で改良したソフトウェアをラット構造MRIに適応した。1.5テスラのみならず、現在他大学と共同研究を行なっている7テスラ小動物用MRIを用いて、ラットの構造MRIを取得し、NLM filterの有無でのセグメンテーション(灰白質・白質・脳脊髄液)精度を検証した。結果としては、NLM filterの適応により明瞭なセグメンテーション精度の改善を認め、繰り返し撮像の減少など撮像時間の短縮効果が期待された。
2: おおむね順調に進展している
①ラット・マウスの構造MRI を用いたNLM ノイズ除去フィルタ性能の検証に関して。ラットについては計画に示した1.5テスラのみならず7テスラMRIを用いた検証も行えており、計画以上の目的を達成している。一方、マウスの検証は現在データ集積を推進中である。②ラット・マウスの構造MRI を用いたセグメンテーション精度向上の検証に関して。上記①と同様ラットでは計画以上である。一方、マウスでの検証は現在進行中である。③ラット・マウスの18F-FDG PET を用いた糖代謝画像へのノイズ除去性能の検証に関して。画像取得は行えているが、PET画像へのNLM filterの適応アルゴリズムを十分に検証できていない状況にある。④GPGPU を用いた3D NLM ノイズ除去フィルタソフトウェアの改良に関して。高性能GPUを有するコンピュータを導入の上でソフトウェアのバージョンアップを行い、さらなる高速化に成功するなど、当初の計画以上に進展している状況にある。上記を鑑み、計画はおおむね順調に進展しているものと判断した。
現時点で、本研究はおおむね順調に進展しているため、平成25年度も当初の研究計画に基づいて推進していく。
該当なし
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