研究概要 |
強度変調放射線治療(IMRT)において発生する線量不定性(治療で投与される線量の不確かさ)を定性的かつ定量的に把握することは治療精度の観点から重要であり、そのための基礎として、感度解析を用いた線量不定性の数学的なモデル化を行った。具体的には、照射時の患者セットアップエラーによる線量不定性をδDとすると、δDはδD(x,y,z,δx,δy,δz)^2=(∂D/∂x)^2 δx^2+(∂D/∂y)^2 δy^2+(∂D/∂z)^2 δz^2のように与えられる。この式の中で(∂D/ ∂x)、(∂D/ ∂y) および (∂D/ ∂z)はある点(x,y,z)における線量Dの空間座標x、y、zに対する偏微分である。 また、IMRT治療プランの線量体積ヒストグラム(DVH)において、あるDVH線量指標をAとすると、患者セットアップエラーによるAの不定性は同様にδA(δx,δy,δz)^2=(∂A/∂x)^2 δx^2+(∂A/∂y)^2 δy^2+(∂A/∂z)^2 δz^2と書くことができる。また、上記の数学モデルを前立腺IMRTプランに応用しその有用性を検証した。具体的にはCTV平均線量、直腸壁V60Gy、膀胱壁V70Gyの、患者セットアップエラーに対する線量不定性を実際に治療が行われた10患者の臨床プランにおいて解析した。その結果、患者ごとに異なる解剖学的差異を反映し、かつ治療プランのDVHを評価しているだけでは把握しきれない線量不定性の潜在的なリスクを数値化することができた。この成果は線量不定性モデルの臨床での有用性を示すものといえる。
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