研究課題
昨年度において、体内安定性に課題を残すI-123標識A3B型ラクトソームに見切りをつけ、より安定性の高いIn-111-DOTA標識A3B型ラクトソームの合成方法を確立したが、本年度はラクトソームを構成するサルコシン鎖の長さを変化させることで様々なA3B型ラクトソームを合成し、これにIn-111標識やICG標識を施すことでよりABC現象を軽減し、2回目以降も良好なイメージングを得られるA3B型ラクトソームの改良や条件検討を行った。その結果、S50A3B型ラクトソームが良いとの結論を得た。しかしながら頻回投与頻回心採血モデルのマウスにおけるELISAや蛍光イメージング実験において、一部のマウスでABC現象を半減させて良好な2回目以降の腫瘍イメージングを得られた一方で、完全に回避するには至らず、群内差も認められたため、機序が解明されていないABC現象に対処する難しさを改めて認めざるを得ない結果となった。さらにSPF動物実験施設でのトリコモナス汚染問題解決やRIセンターでの小動物SPECT/CT機の修理復帰等、実験環境が整ってきたため、腫瘍モデルマウスを用いた小動物SPECT/CTイメージング実験やBiodistributionを進めることが可能になった。また、京都大学薬学部佐治研究室の協力によりβ線核種であるY-90の入手も可能になったため、In-111標識体と同様の手法でY-90-DOTA標識A3B型ラクトソームの合成を行い、これによる内照射療法の治療実験も開始した。最後に腫瘍モデルについてはマウスの悪性黒色腫であるB16f10 Luc細胞を心腔内投与することで胸膜播種やリンパ節転移、骨転移を生じることを確認し、ルシフェラーゼ発光を予め確認したうえで小動物SPECT/CT実験を行った。この結果、微小な胸膜播種病変に対する良好な腫瘍描出像を得た。
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