【目的】難治性がんとして知られる頭頸部悪性黒色腫患者の血液検体を重粒子線治療前に採取し、その遺伝子解析結果と予後や副作用といった臨床データの相関関係を分析することにより、治療前に予後(副作用も含む)を予測するモデルの確立を目的とした。 【方法】重粒子線治療を行う頭頸部悪性黒色腫患者を対象とし、同意書を取得できた治療前患者51名および健常者5名の血液検体のDNAマイクロアレイ解析を行い、遺伝子発現データを取得した。患者を重粒子線で治療後、経過観察を行い、臨床データ(生死、局所再発・遠隔転移の有無、急性期皮膚炎・粘膜炎のGrade)を取得した。臨床データの各項目について、一定量以上の発現増加/減少の見られた50遺伝子を抽出した。主成分分析にて遺伝子発現量の主成分得点を算出した。各項目について患者を2群に分け、主成分得点との相関関係をSpearmanの順位相関係数にて検定した。 【結果】臨床データの各項目について、一部の患者データを用いて得られた相関係数にそれぞれ適切な閾値を設定することで遺伝子発現量と予後との関連性を構築した。この関連性を残りの患者データを用いて検証し、有効であることを確認した。 【結論】重粒子線治療前に血液検体を用いて頭頸部悪性黒色腫患者の予後を予測するモデルを作成した。このモデルを臨床応用できれば、重粒子線治療が有用な患者を事前に知ることができ、治療成績の向上につながるだけでなく、重粒子線という貴重な医療資源の有効活用にもつながると考える。
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