脊髄への血液潅流を評価するためには高い空間分解能と時間分解能を有するシークエンスを用いる必要がある。ただし、MRI撮像において時間分解能と空間分解能は相反する条件であり、より良いバランスを保った撮影法が重要である。MRIメーカーの研究協力によりいくつかの新たなシークエンスでファントム実験を行ったが、空間分解能と時間分解能の両立は難しく、評価に耐えうる画像を得ることができなかった。最終的にはVIBEを用いた造影MRIダイナミックスダディを選択した。VIBEを用いたダイナミックスダディは、肝臓、乳腺領域における画像診断に広く用いられており、空間分解能は担保されている。時間分解能においても、ファントムなどによる実験をもとに、パラメーターを調整することにより、撮影時間を19秒までに短縮可能であった。 しかし、正常例における脊髄領域の画像評価に耐えうる画質を得ることは難しいと思われたため、動静脈が拡張し、血流増加した病態である硬膜動静脈瘻の症例において初の臨床応用を行った。この結果、硬膜動静脈瘻の症例における異常血管を介したシャント血流が椎間孔から脊髄周囲へ流入し、脊髄後方から前方へ循環し、経時的に上位側へ連続していくことが観察可能であった。ダイナミックスダディを用いることにより脊髄の信号変化の観察も可能であり、脊髄の血液潅流を評価することもある程度は可能であると思われたが、空間分解能および時間分解能は十分に高いとはいえず、更なるシークエンスの模索・検討が必要と思われた。
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