研究課題
若手研究(B)
PET用放射性核種である68Gaは、サイクロトロンを必要とせず、ジェネレータシステムにより簡便に製造できるため、その臨床における利用価値は極めて高い。これまでに、腫瘍のペプチド受容体を標的とした68Ga標識リガンドの開発が盛んに行われきたが、保険適応された68Ga標識放射性薬剤は未だ得られていない。そこで本申請課題では、ペプチドリガンドとは異なる機構にて腫瘍内にトラップされる新規68Ga標識低分子イメージング剤の設計、合成及び基礎的評価を行い、臨床応用への可能性を検討することを目的とする。今年度は、まず初めに当研究室にて開発された新たな68Ge-68Gaジェネレータシステムを用いて、68Ga標識薬剤製造のモデル実験を行い、臨床でがんのPET診断の標的となっているインテグリンを標的とした68Ga標識NOTA-RGD誘導体の合成に成功した。続いて、本学設置の小動物用PET/CT装置を用いて担癌モデルマウスにおける腫瘍組織のPETイメージングに成功した。これらの成果により、新規68Ga標識PETイメージング剤の開発を推進するための環境を整えることができた。また、新規68Ga標識葉酸受容体イメージング剤の開発に着手し、folic acidより合成したpteroic acidを用いて、数段階の反応を経て、γ位のカルボキシル基に種々のリンカーを介してNOTAを結合させた68Ga-NOTA-folate誘導体の標識前駆体までの合成に成功した。現在、68Ga標識合成検討及び葉酸受容体高発現細胞を用いたin vitro評価及び担癌モデルマウスの準備を行っているところである。
3: やや遅れている
新規68Ga標識PETイメージング剤の開発を推進するための環境を整えることができ、当初計画していた細胞内トラップ機構に基づいた新規葉酸受容体イメージング剤の標識前駆体までの合成を行うことができた。しかしながら、本年度の計画に挙げていたアミノ酸誘導体等の他の蛋白を標的としたイメージング剤の開発には着手できなかったため、達成度としてはやや遅れているという自己評価となった。
今後は、当研究室オリジナルのジェネレータシステムを駆使して、種々の新規葉酸受容体の開発を推進していき、新たなPETイメージングシステムの構築へと展開させていく。また、アミノ酸誘導体等の他の68Ga標識低分子イメージング剤の開発も行っていく。さらに、新規68Gaキレータの開発も行っていく予定である。
本研究を遂行するにあたり、有機化学的手法を用いたリガンド合成研究のため、化学薬品、ガラス器具、HPLC カラムの購入が必要である。また、放射性リガンド合成のための放射性化合物、化学薬品、HPLC カラムの購入が必要である。さらに、腫瘍細胞を用いたin vitro評価や腫瘍移植モデルマウス等を用いたイメージング評価のため、腫瘍細胞、細胞培養器具、実験動物、麻酔薬やバイオイメージング用試薬等の化学薬品、手術道具等の動物実験器具の購入を検討している。
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