研究課題
本研究ではがん組織への集積性や選択性が極めて高い68Ga標識PET診断薬の開発を目指し、がんに高発現している受容体あるいはトランスポーターを介して細胞内に取り込まれる新規分子プローブの開発を行うこととした。本年度は、がん診断薬剤や抗がん剤の標的として期待される葉酸受容体に着目して、がん標的分子と68Gaキレーター部位を種々リンカーにて結合させた新規68Ga標識葉酸受容体(FR)イメージング剤の開発を行った。FRアゴニストを基本骨格とした68Ga標識薬剤として、pteroic acidより数段階の反応を経て、γ位のカルボキシル基に種々のリンカーを介して68Ga配位子のNOTAを結合させた68Ga-NOTA-folate誘導体の標識前駆体の合成を行った。また、FRアンタゴニストを基本骨格とした68Ga-NOTA-thieno pyrimidine誘導体の前駆体までの合成を同様に行った。続いて、当研究室独自の68Ge-68Gaジェネレータシステムを用いて製造した68Ga-citrateを用いて、まず初めにイソチオシアネート(NCS)をリンカーとした68Ga-NOTA-NCS-folateの標識合成を行った。続いて、小動物用PET/CT装置を用いてFRを高発現しているKB細胞を移植した担癌マウスにおける腫瘍組織のPETイメージングを行ったところ、腫瘍組織のPETによる画像化に成功した。各組織への投与3時間後の集積量は、腫瘍/血液比は44.6で腫瘍/筋肉比は9.27と良好な値を示したが、腫瘍/腎臓比は 0.07であったため、腎臓の周辺部位における腫瘍部位検出の妨げになることが示唆された。現在、他の化合物に関してもKB細胞を用いたFRへの結合性評価及び担癌マウスにおける生体内分布評価に関する詳細な検討を進めているところである。
3: やや遅れている
葉酸受容体以外の標的に対するイメージング開発が遅れている。葉酸受容体を標的としたイメージング剤に関しても、既存の薬剤に比べて優れた性質を有する化合物は得られていない。
シグマ受容体等の葉酸受容体以外の標的へのイメージング剤開発も推進していく。葉酸受容体を標的としたイメージング剤に関しても標的に対する親和性や選択性を高めるとともに、腎集積を低減した薬剤の開発も進めていく。
68Ga標識イメージング剤の開発に関して、合成に成功した化合物の数が予想より下回り、評価等の実施が遅れたため。がん組織における種々の標的に対する68Ga標識イメージング剤の開発を引き続き行い、in vitro, in vivoにおける詳細な評価を推進していく。
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