研究概要 |
分子イメージング法の一つである、電子常磁性共鳴(EPR)イメージング法は、活性酸素種などにより起こる生体の機能情報を、非侵襲的に3次元で画像化できるものである。本研究ではナイトロオキシド化合物を用いて、脳腫瘍で増加する活性酸素種を捉えることで、病態を画像により評価する事を目的とした。当該年度の計画としては『脳腫瘍モデルマウスの作成』と『EPRイメージングにおけるモデルマウスの画像評価』を行う予定であった。『EPRイメージングにおけるモデルマウスの画像評価』を行うのに先立ち、コントロールマウスにおいて血液脳関門を通過し脳組織に入る複数種のナイトロオキシド化合物(アスコルビン酸に強い耐性のある種類と、耐性のない種類の3-hydroxymethyl-2,2,5,5-tetramethylpyrrolidine-1-oxylやmethoxycarbonyl-2,2,5,5-tetramethylpyrrolidine-1-oxyl)を投与し、頭部におけるその分布や代謝速度などの画像評価を行った。コントロールマウスに、様々な体内分布や代謝速度のナイトロオキシド化合物を使用してEPRイメージングを行う事で、脳腫瘍モデルマウスが確立できた際の、比較対象としての基礎データを得ることができた。現在、稼働している高速EPRイメージング装置を使用すると、マウスの頭部におけるナイトロオキシド化合物の3D イメージングを15秒ごとに撮像することが可能となっている。得られた画像データのボクセルごとの信号強度の経時変化から、ナイトロオキシド化合物の消失反応の速度定数および、半減時間を2Dスライス画像にマッピングすることができ、このマッピングにより、どの部位でレドックスバランスに変化が生じたのかを画像から判断する事が可能となった。本成果は国内外で学会発表を行い、現在国際雑誌に投稿中である。
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