分子イメージング法の一つである、電子常磁性共鳴(EPR)イメージング法は、活性酸素種などにより起こる生体の機能情報を、非侵襲的に3次元で画像化できるものである。本研究ではナイトロオキシド化合物を用いて、脳腫瘍で増加する活性酸素種を捉えることで、病態を画像により評価する事を本研究課題の目的とした。最終年度は前年度の実験を踏まえて「EPRイメージングにおけるモデルマウスの画像評価」および「脳腫瘍の早期発見・治療薬の効果判定への応用」を行うことを予定していた。本年度には脳内に出来た腫瘍をMRIのコントラストにより検出する事に成功したが、最終段階である脳腫瘍の早期発見・治療薬の効果判定への応用には現段階では至っていない。しかしながら、既にコントロールマウスにおける、複数種類のナイトロオキシド化合物を利用したEPRイメージング研究では着実に成果をあげており、国際学会での発表なども行っている。さらに、得られたEPRイメージングから算出した、脳内のレドックスバランスの変化を画像化することで、脳内の酸化還元状態を描写する事にも成功している。この結果は国際学会での発表を行い、現在国際雑誌に投稿中である。MRIにより検出できた腫瘍とEPRイメージングで得られた結果より、本研究課題の最終段階である、脳腫瘍の早期発見・治療薬の効果判定という応用研究の部分に明確な結果が得られた際には、国際雑誌への論文投稿も予定している。
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