研究課題/領域番号 |
24791328
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
西尾福 英之 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (80458041)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 分子イメージング / MRI / 肝腫瘍 / 分子標的薬 / ECRI / 個別化医療 |
研究概要 |
背景:血管新生阻害薬(bevacizumab; BV)は、病理学的に腫瘍細胞の壊死率の上昇を引き起こすことが報告されている。一方、我々は、以前の研究でMRIを用いたEquivalent cross-relaxation rate imaging (ECR画像)が腫瘍細胞密度と壊死の評価に優れていることを報告してきた。今回、大腸癌肝転移に対するBVを用いた化学療法の早期治療効果予測におけるECR画像の有用性について後方視的に検討した。 対象と方法:対象は、2012年4月から同年12月に大腸癌肝転移に対して初回治療として化学療法を施行した9例(男4、女5;平均年齢59.8歳;BV併用6、併用なし3)。測定した肝転移巣は15結節(平均径5.2cm)。方法は、ECR画像を治療開始前、開始2週間後に撮像し、腫瘍の効果判定をRECIST criteriaにより8週間後のCTで行った。BVを併用した症例において8週間後の腫瘍効果に対するECR値の変化率を検討し、さらに、BVを併用しなかった症例を対象群として、BV併用の有無で2群に分け、腫瘍効果、2週間後のECR値の変化率について検討した。 結果:BV併用群では、2週間後のECR値の変化率は、30%以上の腫瘍縮小を得た症例が30%未満の腫瘍縮小を得た症例に比べて有意に低かった(p=0.014)。腫瘍の奏効率はBV併用群で50%、併用なし群で66.7%であり、両群に有意な差はなかったが(p=0.635)、2週間後のECR値の変化率はBV併用群で有意に低下していた(p=0.020)。 結語: ECR値の変化率はBVを用いた化学療法における腫瘍細胞の変化に鋭敏に反応することが示唆され、さらに、ECR画像は、大腸癌肝転移に対してBVを用いた治療効果を早期予測する画像マーカーとして有用であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度研究計画①:大腸癌肝転移症例を対象として、bevacizumab(血管新生阻害薬)を用いた化学療法に対する治療効果とECR値の関係を前向きに症例集積した。症例は、平成24年4月~12月までに10例集積し、集積後の経過観察を含めて平成25年3月に登録を終了とし、現在データ解析を行っている。平成25年度に学会発表と論文化を目指している。 研究計画②:上記症例に対して分子標的薬を用いた化学療法に伴う肝機能への影響とECR値の変化・肝細胞特異的造影剤の造影効果との関係を現在データ解析中である。 研究計画③:①、②のデータからECR値と血液生化学データとの時系列の情報解析中である。 上記研究経過については、現在学会発表を計画しており、論文作成に移行していく段階である。
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今後の研究の推進方策 |
ECR値は、腫瘍細胞の密度と壊死の情報を分子レベルで画像化することができる。今回、大腸癌肝転移症例を対象として、分子標的薬であるbevacizumab(血管新生阻害薬)を用いた化学療法に対する治療効果とECR値の関係を前向きに症例集積した結果、ECR値がbevacizumabの治療効果を早期に予測できる可能性が示された。今後、臨床的には引き続き症例集積を実施していく。 さらに、臨床研究と平行して大腸癌肝転移モデルのラットを用いて、分子標的薬やナノdrug delivery systemを使用した抗腫瘍効果を高める因子解析も行っていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度に集積した臨床データの結果を学会発表・論文化に向けて進行させていく。 論文作成時の英文校正費、学会発表時の旅費に使用する。 また、ECRを用いた分子画像の有効性を新たな分子標的薬やナノdrug delivery systemを用いて基礎実験で明らかにしてくための、動物購入などの費用に当てる。
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