研究課題
「がんのアイソトープ治療」は、放射性同位元素 (ラジオアイソトープ: RI) で標識した抗体や低分子ペプチドを標的部位へ送達し、放射線によってがんを殺傷・治療する方法であり、現在盛んに研究が行われている。しかし、RI 標識ペプチドを用いるアイソトープ治療では、血中クリアランスが良好であるものの、正常腎臓に高い放射能集積が認められ、腎毒性を発症することが問題となっており臨床応用への大きな障害となっている。申請者はこれまでに RI標識オクトレオチドを用いて、腎集積低減法を検討してきた結果、母体ペプチドへ酸性アミノ酸を導入し負電荷を付与することで非特異的な腎集積を低減できる可能性を示してきた。本研究では、がん組織への集積性を維持し、非特異的な腎集積を低減する安全で効果的な RI 標識オクトレオチド誘導体の開発を目指した。平成25年度までに評価した 111In-DTPA-オクトレオチド誘導体の中から、腎集積を低減するだけでなく、腫瘍集積および滞留性を大幅に増大する化合物を新たに見出した。この誘導体のペプチド配列を用いて 90Y と安定な錯体を形成することが知られている 1B4M-DTPA 構造を有する放射性オクトレオチド誘導体の合成を平成 26 年度に計画した。1B4M-DTPA-オクトレオチド誘導体の合成に先立ち、錯形成部 1B4M-DTPA 構造の合成を実施した。1B4M-DTPA 構造は、市販のアミノ酸を出発原料に高収率で合成することに成功した。また、1B4M-DTPA を有するオクトレオチド誘導体の合成も実施した。今後、得られた 1B4M-DTPA-ペプチドへの放射性標識、in vitro および in vivo の評価を経て新たなアイソトープ治療薬剤の開発を目指す。
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