放射線治療後の咽頭収縮筋のMR画像での形態的変化と嚥下障害の程度の関係を明らかにするために、初年度に行った咽頭収縮筋の厚みの他、咽頭収縮筋や傍咽頭間隙内脂肪の信号(T1 信号比(T1 SIR)、T2信号比(T2 SIR))の変化や咽頭後間隙の前後径の変化といった嚥下障害に関連すると予想された項目について追加測定し、同一対象での継続観察(最長観察期間:1264日)、測定を行った。 最終年度は新規の上咽頭癌患者を対象としたprospective studyを予定していた。しかし、初年度に行った研究で、放射線治療後早期の咽頭収縮筋の変化が嚥下障害の程度と相関しなかったため、治療後晩期の嚥下関連筋群の変化と嚥下障害の程度を比較検討することにした。また、嚥下関連筋群の造影効果についても当初の検討項目に入れていたが、ほとんどの上咽頭癌患者が化学療法併用放射線治療を行っており、化学療法による一時的な腎機能障害のため、経過観察時早期のMRI検査で造影剤を使用できなかったことがあり、造影効果の検討については省いた。 上、中、下咽頭収縮筋の厚さは放射線治療後観察期間中、大部分の症例で治療前より厚いままで、上咽頭収縮筋では萎縮が見られたが、中、下咽頭収縮筋では萎縮は見られなかった。信号変化の検討では、放射線治療直後にはT1 SIRに有意な変化は見られなかったが、治療後経過時間とともに上咽頭収縮筋のみT1 SIRが有意に低下した。T2 SIRでは、放射線治療直後と経過観察時間ともに上、中咽頭収縮筋のT2 SIRは有意に上昇した。傍咽頭間隙内の脂肪は、治療直後にT1 SIR、T2 SIR共に有意に低下した。咽頭後間隙の前後径は治療後有意に厚くなっていた。いずれの変化も照射による浮腫持続を反映していると推測された。嚥下障害Grade 2群とGrade 3群の治療後早期と晩期での比較では、いずれの項目でもGrade 間に有意差は認められなかった。
|