研究課題/領域番号 |
24791333
|
研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
原 秀剛 北里大学, 医療衛生学部, 助教 (80381424)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 脳梗塞 / Dual-Energy CT / 救急医療 / 被ばく線量 / 脳卒中 / Composition Image |
研究概要 |
本研究では,わが国における死亡率原因の第4位及び寝たきり原因の第1位である脳血管疾患を対象としている.近年は食の欧米化や成人病が増加し脳梗塞が問題視されている.我々は脳卒中画像診断支援法の確立をめざし,疾患検出のための画像処理やX線CTによる描出能及び撮影条件評価を目的にファントム開発を継続的に行ってきた.平成24年度においては,以前の科研費にて開発した脳卒中ファントムによる急性期脳梗塞描出のためのDual-Energy CT画像の利用によるコントラスト改善手法及び頭部領域の被曝線量測定について主に研究を行った. Dual-Energy CT装置の特徴として,2つのX線管球と検出器を有しているため,1回転(1撮影)で異なるEnergy(管電圧)の2画像を同時に得ることができる.我々はこの特徴に着目し,高エネルギー画像と低エネルギー画像の合成画像(Composition Image)の生成から,急性期脳梗塞等の低コントラスト領域の描出能をCNRにより検討した.使用したエネルギーは,80kV+Sn140kV,100kV+Sn140kV,140kV+80kVの3パターンであり,それぞれに合成割合(0.1~0.9,合計1.0)を設定した.その結果,低エネルギー:0.5から0.6,高エネルギー0.4から0.5の合成画像において,急性期脳梗塞のコントラスト上昇を確認した. また,我々はこの撮像手法を臨床に適用させるためにDual-Energy CTの被曝線量を明らかにするため,頭部領域の線量測定を行った.その結果,通常撮影(120kV)に比較して,Dual-Energy撮影にて5~10mGyの線量を低減できる可能性を見出した.以上の研究成果は,2つの国際会議にて我々が世界で始めて発表し高い関心を集めた.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度については,Dual-Energy CT画像の利用によるコントラスト改善手法及び頭部領域の被曝線量測定について主に研究を行った. コントラスト改善手法に関しては,Composition Imageの使用による急性期脳梗塞描出のための条件・傾向を明らかにした.頭部領域の被曝線量測定による本手法の線量が明らかとなり,臨床適応に向けた基準や低減目標が明確になりつつある. また,リアルに人体を再現した脳梗塞模擬ファントムを本年度開発した.現在予備実験中であるが,現在までのデータをより正確に反映した検討が行えると確信している.本ファントムを使用した実験は,平成25年度に遂行予定である.
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度に開発した脳梗塞模擬ファントムを使用した実験を遂行予定である.本ファントムは,現在まで使用した脳卒中ファントムの進化版の位置づけで,人体をリアルに再現したものである.よって,現在までに取得したデータ・傾向をより正確に検討できる可能性を有している.本実験は,臨床試験前に最後のデータとなるため,慎重かつ精密に行う必要があり,追加で画像評価用ファントムや被ばく線量測定のための付属品等の購入・使用が必要になる可能性が考えられる. また,急性期脳梗塞を検出するための画像処理アルゴリズム開発を計画中である.上記ファントムの画像を原画像とする予定である.アルゴリズムのメインにはマルチ周波数処理を応用した周波数強調処理を考案中である.
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度に開発したファントムが,予想よりも安価に作製できたことによる繰越金となった.本年度予算と合わせて,臨床試験前に最後のデータとなるため,慎重かつ精密に行う必要があり,追加で画像評価用ファントムや被ばく線量測定のための付属品等の購入・使用が必要になる可能性が考えられる. また,画像処理アルゴリズム開発用のプログラミングソフトの購入を検討中であることや国際会議にての研究成果発表を計画しているため,旅費や参加費にての支出を計画している.
|