本研究では,わが国における死亡率原因の第4位及び寝たきり原因の第1位である脳血管疾患を対象としている.近年は食の欧米化や成人病が増加し脳梗塞が問題視されている.我々は脳卒中画像診断支援法の確立をめざし,疾患検出のための画像処理やX線CTによる描出能及び撮影条件評価を目的にファントム開発を継続的に行ってきた. 平成25年度においては,昨年度科研費にて開発した脳梗塞模擬ファントムによるDual-Energy CT撮像手法の開発及びX線CT画像における画像処理アルゴリズムの開発について主に研究を行った. Dual-Energy CT装置の特徴として,2つのX線管球と検出器を有しているため,1回転(1撮影)で異なるEnergy(管電圧)の2画像を同時に得ることができる.我々はこの特徴に着目し,高エネルギー画像と低エネルギー画像の合成画像(Composition Image)の生成から,急性期脳梗塞等の低コントラスト領域の描出能をCNRにより検討した.使用したエネルギーは,80kV+Sn140kV,100kV+Sn140kV,140kV+80kVの3パターンであり,それぞれに合成割合(0.1~0.9,合計1.0)を設定した.その結果,低エネルギー:0.5,高エネルギー0.5の合成画像において,急性期脳梗塞のコントラスト上昇を確認した. また,一般X線撮影等(主にCR)に使用されるマルチ周波数処理に着目し,X線CT画像へ応用した.急性期脳梗塞のような低吸収域に特徴的な周波数帯域を選定(10~20cycle/pixels)し,この帯域が多く含まれる画像のみを使用したアルゴリズムを構築し,疾患部のコントラスト上昇に成功した.以上の研究成果は,国際会議にて我々が世界で始めて発表し高い関心を集めた.
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