研究課題/領域番号 |
24791350
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研究機関 | 秋田県立脳血管研究センター(研究局) |
研究代表者 |
山口 博司 秋田県立脳血管研究センター(研究局), その他部局等, 研究員 (00450841)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 放射性医薬品化学 / D3受容体 / PET |
研究概要 |
本研究は、ドパミンD3受容体に選択的に結合するイメージング剤の開発である。ドパミン受容体イメージング剤の一種であるベンペリドールに化学修飾を加え、ドパミンD3受容体への結合選択能の向上を図る。ベンペリドールはブチロフェノン誘導体とベンズイミダゾール誘導体から構成され、両骨格共に化学修飾を加えやすい構造を持つ分子である。これまでに申請者は本合成法を用い、数種類のベンペリドール誘導体を合成している。本研究期間中においてはベンペリドール誘導体に対する標識条件についての検討を行い、標識化合物を用いて実験動物を用いARG法やイメージングによる動物実験を行ない、ドパミンD3受容体への結合および選択性について検証する。 まず、D3受容体に対する誘導体の親和性解析を実施する。非放射性のN-メチル化反応を行ない、合成したN-メチルベンペリドール誘導体の構造解析を行なう。解析にあたっては、核磁気共鳴装置(NMR)や赤外吸収分析装置(IR)、質量分析装置(MS)などの分光光学機器を用いて、その構造を決定する。さらに、構造決定したトレーサー候補化合物について、薬剤物性計算システムを用いて薬剤の脂溶性、血液脳関門(BBB)の透過性、受容体との親和性について解析する。これにより得られた情報をフィードバックし、必要があれば化合物の再設計を行ない、新たな誘導体の合成を試みる。 次に、標識および精製条件の検討比較を行なう。対象とするベンペリドールおよびベンペリドール誘導体の標識条件について検討する。具体的には、標識に用いる[11C]ヨウ化メチルおよび[18F]F-の生成法、反応溶媒、反応時間、精製条件の確立を行なう。また、精製した標識化合物について、化合物の安定性や比放射能についても測定する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで、PETイメージング剤前駆体として、十種類程度のベンペリドール誘導体を合成している。合成にあたって、溶媒や温度、反応時間などの条件検討を行ない、至適条件を見出し、安定的な合成を行なっている。また、合成した前駆体については、分光光学機器を用いて、構造まで確認できている。次に、PETイメージング剤用の短半減期核種導入のための放射性標識条件確立について検討した。標識時においても、溶媒や温度、反応時間、分取や溶媒除去条件について、詳細を検討し、また、これら一連の合成・精製操作をコンピュータ制御し、自動合成装置で安定的に標識できるように、シーケンスの作成を行なった。 一方で、合成・標識した誘導体それぞれについて、薬剤物性計算システムを用いて、ドパミンD3受容体への親和性計算を行なうという計算科学的手法を用いたMDシミュレーションによるスクリーニングを進めてきている。また、実際に標識した誘導体については、オクタノール抽出法による脂溶性や生理食塩水中での化合物の安定性を測定し、PETトレーサーとしての利用の可能性を確認した。 実験動物を用いた検討は次年度として計画していたが、MDシミュレーション結果、物性測定結果を元に、D3受容体への親和性、イメージング剤としての適用の可能性が高い結果が得られた化合物数種類については、すでに実験動物を用い、実際の集積の確認を行なってきている。
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今後の研究の推進方策 |
数種のベンペリドール誘導体のPET核種標識したトレーサー候補化合物は、動物実験の結果、誘導化されたことによって脳移行性(Blood Brain Barrier(BBB)透過性)が落ちる傾向があることを確認している。そこで、これまで合成した前駆体のBBB透過性を上げるための誘導をさらに加えるとともに、これまで合成した化合物についても、直接、D3への結合性を確認する実験を実施する。具体的には、ARG法を用いたIn Vitro ARG、Ex Vivo ARGを実施する。 また、一方で、これまで合成・標識したベンペリドール誘導体は、いずれも短半減期核種[11C]による標識体である。今後、[11C]標識誘導体合成に加え、[18F]標識誘導体を合成する。[18F]標識体は、[11C]標識体より半減期が長く、より長い時間経過後のベンペリドール誘導体の生体内挙動を観察することができるものと考えている。 さらに、D3選択結合性の確認を目的としてBlocking Studyを実施する。例としては、メチルスピペロンのようなD2受容体結合薬剤や、ペルゴリドのようなD3受容体結合薬剤を用い、これらの薬剤をベンペリドール誘導体のアッセイ直前に投与し、阻害の程度や集積変化について観察する。
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次年度の研究費の使用計画 |
これまでの年度で、薬剤物性計算システムに用いるコンピュータやMDシミュレーションソフトウェアの整備ができている。本年度は、主として原料薬剤および実験動物の購入費用、Blocking Studyに用いる薬剤やARG法に用いる消耗品の購入に充てたいと考えている。また、放射性核種製造に用いる小型サイクロトロンに用いる試薬や器具で、必要なものの購入、その他、申請者の所属施設が有していない分光光学機器や小動物イメージング装置利用のための出張経費、学会や論文としての成果発表に研究費を充て、研究を遂行していきたいと考えている。
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