本研究はドパミンD3受容体に選択的に結合するイメージング剤の開発である。ドパミン受容体イメージング剤の一種であるベンペリドールに化学修飾を加え、ドパミンD3受容体への結合選択能の向上を図ることを目的として研究を実施した。ベンペリドールはブチロフェノン骨格とベンズイミダゾリノン骨格から構成されており、両骨格共に化学修飾を加えやすい構造の分子である。 申請者は研究期間内に、上述の骨格を有する誘導体をヨウ化カリウム存在下の加熱で結合させるカップリング法を用いて数種類のベンペリドール誘導体を合成した。合成した誘導体に対し、非放射性原料を用いてN-メチル化反応を行ない、合成したN-メチルベンペリドール誘導体の構造解析を実施した。解析にあたっては、核磁気共鳴装置(NMR)など、分光光学機器を用いて構造決定した。 またサイクロトロンによって製造した放射性ガスを原料とし、ベンペリドール誘導体に対する標識反応を検討し、至適条件を見いだした。具体的には標識に用いる[11C]ヨウ化メチルおよびの生成法、反応溶媒、反応時間、精製条件の確立を行なった。また、精製した標識化合物について、化合物の安定性や比放射能についても測定を実施した。 至適条件により、先に合成したベンペリドール誘導体を標識し、イメージング剤候補化合物とした。イメージング剤候補化合物については、薬剤物性計算システムを用いて薬剤の脂溶性、血液脳関門(BBB)の透過性、受容体との親和性について解析した。 薬剤物性計算システムによるスクリーニングによって選定した候補化合物について、小動物イメージング装置を用いた撮像による動物実験を行ない、ドパミンD3受容体への結合活性、選択性について検証を進めた。D3受容体に対する誘導体の親和性解析を実施し、また、得られた計算結果を元に化合物の再設計を行ない、新たな誘導体の合成を行ないドパミンD3受容体イメージング候補化合物を合成した。
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