研究課題/領域番号 |
24791355
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研究機関 | 独立行政法人放射線医学総合研究所 |
研究代表者 |
永津 弘太郎 独立行政法人放射線医学総合研究所, 分子イメージング研究センター, 主任研究員 (30531529)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | テクネチウム-99m / 医療用小型加速器 |
研究概要 |
核医学において最も利用されるTc-99mの国産化並びに安定供給に資するべく,国内に150基程度存在する医療用小型加速器を利用したTc-99mの製造について研究を行った。以前我々は,標的物質の照射法のひとつである垂直照射法を利用して当該核種の直接製造に成功したが,本法は未だ一般的な照射法とはいえず,幅広い応用・展開が望めない状況にある。従って,小型加速器に代表される一般的な照射法,即ち水平方向に照射されるビームを利用したTc-99m遠隔製造法の確立を試みた。 放射性核種の製造,特にルーチン的な大量製造を試みる場合,作業者の被ばく線量を抑える対策が最重要課題となる。必然的に,製造に関わる全ての工程は遠隔化が求められることから,本年度の研究は,1)標的物質の遠隔調製法の確立,2)照射後の標的物質の遠隔回収法の確立 について重点的に検討を行った。 1)遠隔調製法について,標的物質(モリブデン)を予め酸化させ,過酸化水素水溶液(H2MoO4/H2O2aq.)として準備した。本溶液を150℃程度に加熱した照射容器中へ微流速で供給しつつ,当該配管中で比較的高流速の窒素を混合させ,当該溶液を照射容器内に噴霧する機構を開発した。微細溶液となったMo溶液は,加熱した照射容器に付着すると同時に乾燥する結果,標的物質の理想的な調製状態といえる局所に限定したMoの積層化に成功した。 2)遠隔回収は,NH4OH+H2O2混合溶液(1:1)を標的容器へ直接導入し,目的核種を溶液として回収する手法を採用した。この結果,一般的な遠隔化,即ち固体制御目的で採用されるロボット等の高価な機構を用いない,安価な遠隔回収を実現できた。 上記1),2)を組合せ,励起関数から予測される製造量の約9割に相当するTc-99mが得られることを確認した。また,Tc-99m標識キットの標識効率について予備的な試験を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
放射性核種の製造において基礎となる,1)標的物質の安定的な調製,2)効率的な核反応進行の確認――予測される収率の確保,3)生成物の遠隔的回収の確認 が行えたことから,本研究はおおむね順当なものと評価した。 標識効率の評価は,比較的少量の放射能で検討が行えるもの2種類について予備的に評価を行ったところ,いずれの場合も高い効率(>95%,ラジオ薄層クロマトグラフィ)を確認した。予備的結果ではあるものの加速器製Tc-99mが,従来の原子炉由来Mo-99/Tc-99mと同等の性能を持つことが期待され,現在のところ本研究の進展に目立った遅延は見受けられていない。
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今後の研究の推進方策 |
基礎的な結果がおおむね得られていることから,本年度はより現実的な条件,即ち大量のTc-99m製造条件での評価に推移する。このときの評価項目として,1)Tc-99m収率の安定性,2)複数回の製造に渡る装置安定性,3)10-30 mCiを要するTc-99m標識キットを利用する化合物の標識効率 等を実施する。 Tc-99mの原料となる濃縮同位体Mo-100の再生について検討を始めるとともに,その効率と再利用結果に基づくTc-99m品質の評価を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品として試薬類,照射容器の構成部品・交換部品の購入を予定する。 旅費として核医学会(福岡),PET関連の化学ワークショップ(開催地未定)への参加を予定する。 成果発表に関する英文校正費用を予定する。
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