研究課題/領域番号 |
24791358
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人放射線医学総合研究所 |
研究代表者 |
松本 孔貴 独立行政法人放射線医学総合研究所, 重粒子医科学センター, 研究員 (70510395)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 分割照射 / 転移 / 不均等分割 / 遊走能 / 浸潤能 / 細胞致死 |
研究概要 |
本研究は、既に得ている転移への放射線単回照射の効果を治療に適用するため分割照射を用い、転移抑制に繋がる知見の取得、及び転移抑制から見た分割照射方法の提案を目的とする。その手法として従来の均等分割に加え、最初だけ高線量を投与するなどの不均等分割照射法について検討する。初年度である今年度は、不均等分割照射の前段階として1)X線及び炭素線による線量均等分割照射後の生物効果の違いを、細胞実験にて調べた。 細胞は、高転移性を有するマウス骨肉腫由来LM8細胞を用いた。X線はPANTAK 320型を用いて照射し(200 kV, 20mA)、炭素線は290 MeV/uで加速された6cm拡ブラッグピーク(SOBP)ビームのSOBP中心で照射を行った。分割回数は1回~5回、分割間隔は24時間(1日)とした。細胞の転移能として遊走能と浸潤能をBoyden chamber assayとMatrigel invasion assayを用いてそれぞれ求めた。また、生物効果の基準として細胞致死についてコロニー形成法で調べた。 X線の場合、1回照射に比べて分割照射では,分割回数が2回~5回と増加する伴い遊走能および浸潤能の亢進が見られ,その程度は高線量域(4-8 Gy)よりも低線量域(0.25-2 Gy)でより顕著だった。炭素線照射群では分割回数の増加に伴う転移能の亢進がX線に比べ顕著では無かった。転移能解析で見られたのと同様の結果が、細胞致死解析の結果でも確認された。以上の結果から,他の生物学的エンドポイントと同様に高LETの炭素線では低LETのX線に比べ分割することによる効果の低減が少ないことが確認され、臨床で行われている分割照射でも,転移抑制の点で炭素線が優れている事が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定としては、1年目にX線を用いた均等分割実験を細胞と動物で行う予定だったが、実験の都合上細胞実験と動物実験を分けた方が効率的であると判断し、1年目後半から行う予定であった細胞を用いた炭素線による均等分割実験を1年目に完遂した。合わせて、動物を用いた均等分割照射実験も既に一部遂行しており、当初の予定通り、2年目までで均等分割照射による実験は、細胞・動物実験共に完了できると思われる。 エンドポイントについても転移能解析の指標として遊走能と浸潤能の2つのエンドポイントについてデータを得ており、かつ生物効果の基準として細胞致死についてもデータを得ており、予定通り潤滑に進行している。 結果についても、実験計画段階での仮説通り、X線照射の場合低線量域において分割回数に依存した転移能及び細胞生存率の上昇が確認された。一方で、炭素線についても予想通り分割回数による生物効果の減弱は少ないことを示すデータを得られている。 これからの結果を踏まえて、当初の予定通り進めれば、研究計画にて述べた内容を完遂することが出来ると考え、区分を「おおむね順調に進展している。」とした。
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今後の研究の推進方策 |
1年目の成果を踏まえて、研究計画通り進めていく。2年目は、既に一部のデータの取得を開始しているマウスを用いた動物実験を遂行する予定である。X線及び炭素線(SOBP中心)において均等線量分割照射を行い、転移解析として肺転移結節数の変化を調べ、生物効果の基準として細胞致死をin vivo-in vitro assayにより調べる。これにより、細胞実験で得られた低LETであるX線の生物効果(転移能抑制、細胞致死)が分割回数依存的に減弱する結果、及び炭素線の生物効果は分割回数への依存が低い結果を、動物腫瘍モデルにより評価が可能となる。 2年目後半からは、本研究の主題でもある不均等分割照射による実験を開始する。まずは細胞による実験から開始し、分割照射で重要となる種々の因子の決定を行う。具体的には、使用する総線量、分割回数、分割間隔、1回線量、線量配分に加え、X線と炭素線を組み合わせることで、線質(LET)の配分も考慮する必要がある。3年目に動物を用いた実験も潤滑に行えるように、2年目のうちに上記の因子を決定しておく必要がある。 以上の研究成果から、細胞致死(腫瘍制御)だけで無く、転移能抑制(遠隔転移制御)も念頭に置いた場合、どのような分割照射プロトコルが最も効率的であるかと提案することが可能になると考える。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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