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2012 年度 実施状況報告書

強度変調型陽子線治療法における門数および照射方向の最適決定法

研究課題

研究課題/領域番号 24791359
研究機関独立行政法人放射線医学総合研究所

研究代表者

稲庭 拓  独立行政法人放射線医学総合研究所, 重粒子医科学センター, チームリーダー (10446536)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2014-03-31
キーワード粒子線治療
研究概要

放射線治療では標的臓器、それの近傍にある決定臓器、周辺の正常組織への放射線照射効果を評価して、治療効果と正常組織障害との適切な兼ね合いを考慮することが重要である。それには①照射線量分布の最適化、②多門照射の門数、照射方向の選択、③分割照射の最適化などが重要である。この研究では②の課題を解決する数学的手法の開発を目指す。
重粒子線治療では線量がブラッグ・ピークの周辺に集中する利点があり、治療効果は優れているだけ慎重に照射方向の最適化を行う必要がある。標的臓器の治療効果、決定臓器、正常組織への線量寄与を考慮した何等かの”リスク指数”を用いて線量分布を評価し、照射方向の優劣を判定する。照射方向は体軸に対して垂直な面内の角度と体軸からの傾き二つの高い自由度があるので、個々の照射方向につき精密な線量最適化をしたのでは計算時間がかかりすぎ、線量分布の正確さを多少犠牲にして、線量分布最適化の計算時間の短縮法をスポット・ビーム・スキャン照射につき探索する。
ペンシル・ビームが媒体に付与する線量の分布は近似的にビーム方向の成分とそれに垂直な方向の分布に分けられる。後者は照射領域の十分内部の線量分布が平坦な部分ではビーム中心を挟んで左右の寄与が相殺するが、照射領域の端では内部から外へはみ出すが、外部から内部への線量寄与はないので、ビームに垂直な方向の線量分布は照射領域の端でのみ影響を持つ。照射方向の最適化を目指す本研究ではビームに垂直な方向の線量の広がりを無視し、ビーム方向の線量分布のみを考慮する近似を行う。この場合は線量分布最適化問題は一次元になり、指定線量の平坦部の長さと最大飛程のみにより最適線量分布は決まるので、予め計算した分布を利用することにより最適化のプロセスを省き、計算時間を短縮できる。本年度の研究では前立腺がんモデルを用いて最適化プログラムのプロトタイプ開発を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

最適化プログラムのプロトタイプを開発し、数値ファントムや患者例に適用し評価できる段階に至った。また、その成果の一部を教育講演や学会発表で報告することができた。しかし、開発・評価の過程で当初計画していた数学問題clusterongの適用が難しいことが分かってきたため、現在これを補うアルゴリズムの検討を行っている。

今後の研究の推進方策

本年度は前立腺がんモデルを用いて最適線量分布の簡便な近似計算法の開発を目指し、アルゴリズム上の問題点の洗い出し、簡素化などを行い、”リスク指数”の照射方向依存性を求める手法を開発した。現実の治療計画では多様な状況がありうる。標的臓器が一つの領域であっても形状が凹だと複数回にわたり照射線が標的臓器を通過する場合があり、その線量最適化をどうするかが問題になる。与えられた照射方向につき、複数の標的領域があっても最適化は可能だが、提案した簡易版の線量計算では対処できなかったが、近似的に三つまでの標的領域には対処できる方法を開発した。それ以上の場合もアルゴリズムが複雑になるだけで、原理的には対処できる。
現状では体軸に対して大きな角度で照射した場合にCTデータが測定されていない領域をビームが通過してしまうような事態が生じるが、この場合は除外しなければならないが、対処できていない。体輪郭が複数の部分よりなる場合、例えば両下肢には適切に対処できていない。
照射方向を変数とした”リスク指数”分布は求められたが、極端に突出した個所とか凹みは観測されていない。したがって、照射方向の組み合わせを選択するには互いに適当に隔たっている照射方向の組み合わせを見つける方法を模索する。IMRT(Intensity modulated radiation therapy、強度変調放射線治療)ではリスク指数の分布は顕著な凹凸があり、clustering(区画分割)法により最適な照射方向のセットを求めているが、重粒子線治療で”リスク指数”の分布がかなり対極的な凹凸はあるものの、局所的な凹み(リスクの小さい個所)は観測されていない。したがって、clusteringの手法は適用できそうもなく、なんらかの別の視点で照射方向の組を求める手法を開発する。

次年度の研究費の使用計画

多種多様な臨床データに対する評価を行うため、高精度な開発・評価環境を整備する。また、研究成果を国内会議、国際会議で報告するための学会費や旅費、学術論文に投稿するための英文校正費として使用する予定である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 2件)

  • [雑誌論文] 放医研における粒子線スキャニング法の開発2013

    • 著者名/発表者名
      稲庭拓
    • 雑誌名

      Japanese Journal of Medical Physics

      巻: 32巻 ページ: 74-80

    • 査読あり
  • [学会発表] A microdosimetric kinetic model for RBE prediction in carbon ion radiotherapy2012

    • 著者名/発表者名
      Taku Inaniwa
    • 学会等名
      Mini Micro Nani Dosimetry 2012
    • 発表場所
      Wollongong, Australia
    • 年月日
      20121206-20121209
    • 招待講演
  • [学会発表] Radiotherapy with scanned-ion beams2012

    • 著者名/発表者名
      稲庭拓
    • 学会等名
      第104回日本医学物理学会学術大会
    • 発表場所
      筑波、日本
    • 年月日
      20120913-20120913
    • 招待講演
  • [学会発表] 重ね合わせ照射のためのRobust最適化演算法2012

    • 著者名/発表者名
      稲庭拓、兼松伸幸、古川卓司、森慎一郎、白井俊之、野田耕司
    • 学会等名
      第103回日本医学物理学会学術大会
    • 発表場所
      神奈川、日本
    • 年月日
      20120412-20120415

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公開日: 2014-07-24  

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