本研究の目的は、治療用電子線の吸収線量の測定が可能な線量計であるグラファイトカロリーメータの開発である。このグラファイトカロリーメータは、検出器と制御測定系に大別され、過去2年度(平成24、25年度)にわたって、両者の開発を進めてきた。最終年度である今年度は、検出器と制御測定系を統合するシステムを開発し、グラファイトカロリーメータの性能評価を行った。性能評価は、内臓ヒーターへの電気加熱によるオフラインテストと、放射線を照射した動作テストの二つの方法で実施した。 グラファイトカロリーメータの運転モードには、等温モードと準断熱モードの二種類があるが、電気加熱によるオフラインテストでは、等温モードで性能評価を行った。等温モードとは、受光部の温度が、放射線の有無に関わらず常に一定になるように、外部ヒーターの電力を制御し、照射前後の電力の変化量から放射線のパワーを求める方法である(コバルト60など線量率がほぼ一定の線量計測に使用する方法)。受光部に二つのヒーターを内蔵し、一つは等温モード制御に使用し、もう一方のヒーターに既知の電力を印加した。この既知の印加電力が、等温モードによって正確に測定できるかにより、グラファイトカロリーメータの性能評価を行った。その結果、70μW程度のパワーを正確に測定できることが分かった(標準偏差は約5μW)。治療用電子線の線量が100μW程度であるため、問題なく測定できる精度である。 放射線照射による性能評価では、準断熱モードを使用した。準断熱モードとは、受光部が疑似的な断熱状態になるように二重の熱シールドの温度を制御し、放射線による受光部の温度上昇から線量を求める方法であり、医療用電子線加速器など線量率が一定ではない線量測定に使用する。この準断熱モードで治療用重粒子線の線量測定を行い、ノイズの多い照射室内においても動作し線量測定できることを確認した。
|