研究課題/領域番号 |
24791366
|
研究機関 | 静岡県立静岡がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
金野 正裕 静岡県立静岡がんセンター(研究所), その他部局等, 研究員 (60466654)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 金属コロイド / ナノ粒子 / 線量測定 / マイクロドシメトリー |
研究概要 |
金属材料からの散乱電子線の測定が主要なテーマである。通常困難であると考えられているサブミリスケールの線量測定を、比較的エネルギーが高く検出可能な2次電子に注目することで行う。空間的な配置を工夫したフィルム測定系と各種補正係数を求めるモデル計算とを組み合わせて、2次電子の発生量とエネルギー分布、及び、局所線量を推定する。 金属板、金属薄膜の材料を用いてX線照射系とフィルム測定系の準備を進めた。リニアックからのX線ビームを細いペンシル状に整形するために細孔を持つ金属コリメータを用意した。X線の線質(実効エネルギー)、空間プロファイルの測定を行った。線量測定には高感度でかつ高原子番号の物質を含まないガフクロミックフィルムを用いた。フィルムの濃度校正や読取りにおける各種の不確定性と再現性を評価した。 金属材料からの散乱電子線の測定が目的であるので直接線が入らないように金属材料とフィルムを配置して測定系を構成する必要がある。フィルム線量測定における空間的配位(X線軸からの距離と深度)の検討を、モンテカルロベースのモデル計算Geant4を用いて行った。測定系の物質組成とジオメトリーを計算機上で再現してX線と2次電子の輸送計算を行い、その計算とフィルム測定結果を比較することで、2次電子の発生量とエネルギー分布、局所線量を推定した。次に、金属コロイド溶液を扱う場合の予想計算を行い過去の文献との比較を行った。これらを通して基本的な線量測定の方法論の確立を進めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
金属材料とフィルムとの空間的配位の複数条件についてフィルム線量測定を行った。サブミリスケールの線量測定を、比較的エネルギーが高く検出可能な2次電子に注目することで可能にしたいと考えている。フィルム測定とモンテカルロ計算との比較を通して局所線量を推定するため、フィルム測定における各種の不確定性(濃度校正、スキャン再現性)の評価を入念に行った。濃度の平均値だけでなく、濃度のムラ(関心領域の大きさに依存)に注目することで低線量について感度良く検出できることがわかった。 金属材料とX線フィルムの空間的配位を検討するためモンテカルロベースのモデル計算(Geant4)を行った。基本的な照射条件を複数の場合について試すことで計算の妥当性と適用範囲を確認していった。 モデル計算では考慮していないフィルムの設置位置精度や空気の隙間などの因子についても、その影響を測定の不確定さとして評価した。X線や2次電子の散乱、幾何的因子などの各種補正係数を求める手順を得ながら、実際のフィルム測定結果と計算結果を比較することで、2次電子の発生量とエネルギー分布、局所線量(金属材料からの距離の関数として)を推定した。
|
今後の研究の推進方策 |
金属粒子分散系として金属コロイド(ナノ粒子)中でのフィルム線量測定を行う。金属ナノ粒子の種類、粒径、濃度をパラメータとしてそれぞれの依存性を測定し、これまでに準備したモンテカルロベースのモデル計算と比較する。金属コロイドの粒径や一様性をコントロールすることが難しいことが予想されるが、その場合は1パラメータ測定になるように他の条件を揃え測定量の定性的な変化を調べていく。また、金属ナノ粒子の種類を変えての測定において粒径や分散度などの性質の良いコロイドが得られない場合は、安定度の高い金ナノ粒子コロイドに種類を絞って取り組む。 フィルム測定による2次電子発生量評価と合わせて活性酸素種の発生量を測定し両者の相関を調べる。金属粒子分散系における局所線量と活性酸素種の発生量との間に正の相関があることが予想されるが定量的に測定することを目指す。物理量として絶対値を得ることは難しいが、金属ナノ粒子の粒径や濃度の依存性を調べることができるはずである。活性酸素種の検出には蛍光試薬を用いX線照射後に蛍光強度の測定を行う。分光測定装置の利用の制約上、X線照射と蛍光分光測定との間に時間を要することになるが待ち時間の異なる複数のバッチを設けて減衰の程度を確認する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
金属粒子分散系として金属コロイド(ナノ粒子)を使用した線量測定を行うため市販の金属コロイド溶液を購入する。金属ナノ粒子の種類(金、銀、白金、等)、粒径、濃度をパラメータとして測定を行うために複数を準備する。合わせて、希釈等の濃度調製を行うための溶媒(水/エタノール)に使用する。 活性酸素種の検出のために蛍光試薬(研究用)、蛍光分光測定の利用を計画している。X線照射と蛍光分光測定との間の時間を変えながら測定することで蛍光強度の減衰の程度を確認する。そのために複数のバッチを用意する。
|