研究概要 |
本年度は試料の収集が想定以上に進み、来年度で予定していた2), 3)の研究項目についても前倒しして行うことにした。 1) HR陽性/HER2陰性乳癌の臨床病理学的検討を行い、その特徴を全国学会で報告した。また、多数のFFPE標本からDNAを抽出してアレイCGH解析を行なう過程で、アレイCGH解析における品質予測因子を同定した。全国学会・国際学会にて発表し、成果は学術雑誌に掲載予定である。この知見により、困難とされるFFPE標本を用いたaCGHについての品質管理が可能となり、膨大なアーカイブを活用可能となる。 2)GINを指標にした乳腺腫瘍の新規診断法(FNAC-aCGH法)についての検討を行った(前向き観察研究)。FNAC-aCGHにおけるプロファイルと主腫瘍からのものの比較では、コピー数一致領域は平均 97.0% (100-93.1%) と高率であった。また、悪性腫瘍は良性腫瘍と比べてコピー数変化領域が有意に大きく、高いGINを示した(13.0% vs 3.4%, P=0.005)。成果は全国学会にて報告し、学術雑誌に投稿中である。本手法により、診断困難な乳腺腫瘍においても非侵襲的な良悪性鑑別の可能性が示唆された。 3)Subtypeの異なる乳癌細胞株(MCF7, MDA-MB436, MDA-MB468)においてGINをターゲットとした合成致死を評価すべく、OlaparibとGimeracilの相乗効果を検討した。GINの高いMDA-MB436 (TN, BRCA1 mut+)ではOlaparibのみで増殖抑制を認め、MDA-MB468 (TN, p53 mut+)では併用において増殖抑制を認めた。MCF7では併用においても増殖抑制は認めなかった。今回の結果より、GINを標的とした治療法を開発すれば、副作用が少なく、癌にのみ効果のある治療となる可能性が示唆された。
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