研究課題
これまで肝内胆管癌におけるP-cadherinの発現の意義と予後に与える影響、またその発現を制御する機構の解明を行ってきたが、今年度は膵癌における検証を行った。当科で外科的切除を行った膵癌73症例に対し、P-cadherinの免疫染色を行った。P-cadherinの発現は、男性、後方組織浸潤、他臓器浸潤と有意に相関していた。P-cadherinの高発現群と低発現群に分けて予後解析を行ったところ、無再発生存はP-cadherin高発現群で有意に不良であった。Cox比例ハザードを用いた多変量解析の結果、P-cadherinの高発現は、再発の独立規定因子であった。膵癌細胞株においてRT-PCR、Western blot法により、P-cadherin mRNA及び蛋白の発現解析を行ったところ、6種中3種で高発現を認めた。P-cadherin高発現株であるPK59においてsi-RNAを用いてP-cadherinのknockdownを行うと、増殖能は不変であったが、浸潤能、遊走能が有意に低下した。また、P-cadherinの発現を認めない膵癌細胞株MiaPaCa-2にP-cadherinを強制導入したところ浸潤能、遊走能の有意な亢進を認めた。膵癌において、メチル化特異的PCRの手法を用いてP-cadherinのプロモーター領域のメチル化の有無を検討したところ、P-cadherin高発現株ではプロモーター領域の脱メチル化を認める傾向にあった。P-cadherin低発現株であるMiaPaCa-2に5-AZAを添加すると同部は脱メチル化されたが、それに伴ってP-cadherinの発現上昇を認めた。以上より、胆管癌と同様、膵癌においてもP-cadherinの発現は浸潤、遊走能の上昇を介して癌の悪性化に寄与しており、その発現にはプロモーター領域の脱メチル化が関与している可能性が示唆された。
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