研究課題/領域番号 |
24791386
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
杉田 諭 大分大学, 医学部, 医員 (20625470)
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キーワード | 実験外科学 |
研究概要 |
平成25年度の研究計画は、昨年に引き続き開発した新規ビタミンE誘導体ETS-GSのラット放射線性腸炎モデルに対する抑制効果を検討することであった。雄性SDラットをコントロール群、放射線照射単独群、放射線照射+ETS-GS投与群の3群に分け、放射線照射単独群および放射線照射+ETS-GS投与群はセシウムを線源とした放射線10Gyを全腹一回照射を行った。放射線照射+ETS-GS投与群はさらに放射線照射2日前から照射後2日目まで計5日間、1日10mg/kgのETS-GS皮下投与を行った。放射線照射後3日目に犠死を行い各種検討を行った。採取した回腸の病理学的所見においてETS-GS投与群は放射線照射による粘膜のびらん、炎症細胞の浸潤、粘膜下層の浮腫などの軽減が認められた。また回腸組織においてマロンジアルデヒド、ミエロペロキシダーゼ、カスパーゼ3/7などの酸化ストレスマーカー、炎症系マーカーの測定を行ったところ、これらの発生が有意に軽減されていた。さらにアポトーシスの程度の指標となるTUNEL染色においても、放射線照射単独群と比べ放射線照射+ETS-GS投与群では有意に染色が抑制されていた。以上の結果から、新規ビタミンE誘導体ETS-GSの皮下投与によって、放射線性腸炎による粘膜障害への抑制効果が示された。この効果には粘膜における酸化ストレス発生や上皮細胞のアポトーシス誘導抑制の関与が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度に研究予定であった新規ビタミンE誘導体ETS-GSの放射線性腸炎モデルに対する抑制効果の検討では、既に認めていた臨床所見・回腸粘膜の肉眼的・病理学的初見、アポトーシスや酸化ストレスマーカーの測定などを、症例を増やして行うことであり、概ね達成できた。また炎症系マーカーの測定を追加し効果を示した。同研究に関する論文を作成し、査読付き科学論文に掲載された。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、放射線性皮膚炎モデルや放射線性腸炎(晩期障害)モデルに対するビタミンE誘導体ETS-GSの抑制効果の検討を行う。 ①放射線性皮膚炎モデルにおけるビタミンE誘導体ETS-GSの抑制効果 雄性SDラットをコントロール群、放射線照射単独群、放射線照射+ETS-GS投与群の3群に分け、放射線照射単独群と放射線照射+ETS-GS投与群はセシウムを線源とした放射線10Gyを一回照射する。ETS-GS投与群はさらに放射線照射2日前から照射後2日目まで計5日間、1日10mg/kgのETS-GSを皮下投与する。放射線照射3日後に犠死させ皮膚組織を回収し、皮膚炎抑制効果を検討する。評価項目として、皮膚組織の臨床・肉眼・病理組織学的所見、アポトーシスの程度、酸化ストレスマーカーの測定を行う。 ②放射線性腸炎モデルにおけるビタミンE誘導体ETS-GSの抑制効果(晩期障害) 放射線照射後比較的期間をおいた(半年~1年)ラットモデルから回腸組織を採取し、組織障害の程度及びビタミンE誘導体ETS-GSの抑制効果を網羅的に解析し、比較検討する。
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