(最終年度の研究成果) 平成26年度の研究計画は、放射線性皮膚炎モデルや放射線性腸炎(晩期障害)モデルに対するビタミンE誘導体ETS-GSの抑制効果の検討を行うことであったが、これらの間に何らかの相関があることは示唆されるが、研究期間が短く本年度は思うような成果は得られなかった。引き続き検討を継続する必要があると考えられた。 (研究期間全体を通した本研究の成果) 本研究では開発した新規ビタミンE誘導体ETS-GSの放射線性腸炎モデルに対する抑制効果を検討した。雄性SDラットをコントロール群、放射線照射単独群、放射線照射+ETS-GS投与群の3群に分け、放射線照射単独群と放射線照射+ETS-GS投与群はセシウムを線源とした放射線10Gyを全腹一回照射した。ETS-GS投与群はさらに放射線照射2日前から照射後2日目まで計5日間、1日10mg/kgのETS-GS皮下投与を行った。採取した回腸の病理学的所見においてETS-GS投与群は放射線照射による粘膜損傷の軽減が認められた。また回腸組織のアポトーシス(TUNEL染色・カスパーゼ活性)、酸化ストレスマーカー(マロンジアルデヒド)、炎症系マーカー(ミエロペロキシダーゼ)の発生が軽減されており、ビタミンE誘導体ETS-GSの皮下投与によって、放射線性腸炎による粘膜障害への抑制効果が示され、この効果には粘膜における酸化ストレス発生や上皮細胞のアポトーシス誘導抑制の関与が示唆された。今回の研究では、動物モデルを用いた放射線の急性期障害の抑制効果を示したが、 今後の課題として、投与期間、投与量、他の投与経路での有効性、機序、毒性、薬物動態の他、晩期障害への効果や放射線治療効果への影響などの検討を行うことが臨床応用に向け必要と考えられた。
|