研究課題/領域番号 |
24791394
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
松本 暁子 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (70573418)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | MALDI-IMS / メタボローム解析 / 乳癌 / サブタイプ |
研究概要 |
乳癌組織中で不均一に生じる変異を、MALDI-IMSを利用して同定すると同時に可視化することで、変異の局在を二次元情報として把握することが可能である。我々はこの手法を用いて、乳癌における針生検検体へその応用を広げ、解析を施行した。穿刺吸引法により採取された乳癌針生検検体は30秒以内に液体窒素へ保存することが可能であり、検体の劣化が生じることがないため、メタボローム解析やMALDI-IMSによる解析に非常に適している。我々は乳癌におけるintrinsic subtype別の代謝活性の違いを明らかにすることを目的として、サブタイプごとにまずはCE-MSを用いたメタボローム解析を行い、特にトリプルネガティブ乳癌における非常に特徴的な差異を検出することが可能であった。またこれら特徴が癌部・非癌部等の組織のどの部位に認められるのかを同定するため、MALDI-IMSを用いて2次元平面上で質量分析の画像の作成を試みた。まず各サブタイプに属する乳癌細胞株を用いてマウス異種移植モデルを作成し、採取した腫瘍におけるサブタイプ間の相違をMALDI-IMSを用いて解析を行った。さらに、ヒト臨床検体を用いて同様の差異が観察されるかを検討したところ、特定の代謝産物の発現が細胞株からの腫瘍における発現に一致することが観察され、抗癌剤耐性に関わる物質であることが同定された。今後は本代謝産物に着目し、これら代謝経路の差異を利用して、抗癌剤への感受性を予測可能か否かを検討していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
充分なインフォームドコンセントの下に患者の同意を得た症例に対し、Vacora®を用いた乳癌に対する穿刺吸引組織診を施行して検体を採取し、メタボローム解析を行っている。乳癌の各サブタイプ(Luminal A, Luminal B, HER2-enriched, Basal-like)の症例を蓄積して解析を行い、代謝特性の相違を検討している。 また、MALDI-IMSを用いて代謝産物の網羅的解析と癌部・間質・血管内皮等のどの部位で変化が生じているかを検証しており、データを蓄積中である。
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今後の研究の推進方策 |
Basal-like乳癌はmammary progenitor cell由来である事が示唆され、癌幹細胞との関わりが深いとの報告が多数なされている。このことからbasal-like乳癌におけるGSHの蓄積が乳癌癌幹細胞分画による、シスチントランスポーターとCD44の相互作用である可能性が示唆される。よって今後の本研究の推進方策として以下のように予定している。 蓄積した約300例の乳癌凍結検体におけるGSH濃度を測定し、各サブタイプ別の相違を検証する。これら検体のCD44の発現検討を行い、GSH濃度との関連性を検討する。細胞内GSHレベルに影響を与えるγ-グルタミルトランスフェラーゼ(GGT)の阻害剤であるGGsTopおよびアシビシンを、細胞株による異種移植モデルへ適用する。各種細胞へvenus-luciferaseを導入することで、in vivoでの腫瘍量・転移の有無をマウス体外からluciferase活性を測定することで、検知することが可能であり、Basal乳癌に対してGGT阻害剤、抗癌剤との併用が効果的であるかを検証することで、トリプルネガティブ乳癌に対する新しい治療戦略の可能性を探る。
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次年度の研究費の使用計画 |
動物購入費用、メタボローム解析に関わる実費、PCRや免疫染色に必要な試薬・消耗品を購入する。また、国内・外国旅費、謝金、印刷代等に利用する予定である。本研究において使用する大型機器の購入計画はなし。
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