研究課題
Hic-5が、動脈瘤病変形成過程で主要な役割を担う血管平滑筋細胞に高発現していることから、apolipoproteinE (apoE) 欠損マウスにアンギオテンシンII (AngII)を持続投与することにより誘導される腹部大動脈瘤(AAA: abdominal aortic aneurysm)モデルマウスを用いて Hic-5 の動脈瘤形成過程への関与を検討した。その結果、Hic-5/ApoE 両遺伝子欠損マウスでは動脈瘤の形成及び動脈瘤破裂による死亡がほぼ完全に抑制された。動脈瘤病変部位を組織学的に解析したところ、ApoE遺伝子欠損マウスでは血管中膜弾性版の断片化や断裂が観察された一方でHic-5/ApoE両遺伝子欠損マウスでは弾性版の破損は認められなかった。またMOMAやα-SMAなどの細胞特異的マーカーとの共染色により、Hic-5は病変部位においてマクロファージでの発現は確認されず、平滑筋細胞にのみ発現が観察された。この結果を受けて、次に作製した血管平滑筋細胞特異的Hic-5欠損マウスではAAA形成および動脈瘤破裂による死亡が顕著に抑制されることが明らかとなった。このことから、血管中膜平滑筋細胞でのHic-5の機能が動脈瘤発症過程において重要であることが示された。特筆すべきこととして、血管平滑筋細胞内のAngIIによるHic-5発現誘導は、ROSスカベンジャーにより完全に抑制された。よってAngIIによって発生することが知られている活性酸素種の下流でHic-5が機能していると予測される。さらに、詳細なメカニズムを解析したところ、Hic-5の欠損により血管平滑筋細胞から分泌されたマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)、特にMMP2の発現及び活性化が抑制されたことがわかった。AAA形成において血管平滑筋細胞内のHic-5は重要な役割を果たしていることがわかった。
2: おおむね順調に進展している
計画通りでIn vivo の解析では平滑筋特異的なHic-5コンデイショナルターゲテイングマウス(SMMHC-Cre/hic-5-/-)を作製し、このマウスに AngII 持続投与後形成される動脈瘤病変の進行度を解析した。現在に大動脈瘤発症抑制メカニズムに関する細胞生物学、分子生物学的解析を行っている。
大動脈瘤発症抑制メカニズムに関する細胞生物学、分子生物学的解析を行う。特にHic-5を介してMMP2の発現及び活性化が抑制されたメカニズムを追究する。現在に細胞内シグナル伝達経路のc-Jun N-terminal kinase 2 (JNK2) 経路を注目し検討している。
細胞生物学、分子生物学的解析を行う費用、マウスの飼育維持費用、遺伝子導入、解析する費用、ヒト大動脈瘤を解析する費用。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)
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http://www10.showa-u.ac.jp/~biochem/Biochem/Biochem_top.html