研究課題
マウス下肢虚血モデルを作成し経時的に評価を行い、生理学的、組織学的、分子生物学的データの収集を行った。①レーザードップラーによる下肢血流の評価。②モデル作成後、6時間後、1日、3日、7日、14日目に大腿の骨格筋を回収し、HE染色を行い、骨格筋障害、骨格筋再生、炎症細胞浸潤などについて評価。③モデル作成後、骨格筋を回収し、P-STAT3, P-AKT, P-ERK1/2, P-AMPK, SOCS3をウエスタンブロットで評価。また、P-STAT3の免疫染色を行い、局在性を評価した。④凍結切片にてCD31で免疫染色を行い、毛細血管の数を測定。⑤血管新生関連遺伝子、サイトカイン関連遺伝子を網羅的にリアルタイムPCRアレイによる発現遺伝子の解析を行った。以上より、下肢虚血における骨格筋の再生、血管新生の過程おいて、STAT3に関連する炎症性サイトカイン、ケモカイン、血管新生因子の活性化を認めた。次に骨格筋特異的STAT3-KOマウスにおいて下肢虚血モデルを作成した。前述の項目についてコントロールマウスと比較評価したところ、骨格筋特異的STAT3-KOマウスにおいて炎症性サイトカイン、ケモカインが抑制されているために血管新生が抑制されていることが考えられた。主要な炎症性サイトカインで血管新生にも重要であるIL1betaの発現細胞を明らかにするために、In situ hybridizationを行いIL1beta mRNAの発現を調べたところ、Controlマウスの下肢虚血24時間後の組織において、骨格筋細胞の隙間や血管周囲に浸潤している炎症細胞にIL1betaのmRNA発現を認めた。骨格筋特異的STAT3-KOマウスでは、コントロールマウスと比較して、陽性細胞数は少ない印象であり、血行改善の経路において、炎症経路や骨格筋細胞に何らかの関連があり重要である事が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
本研究の目的は、下肢虚血組織下の血管新生における、骨格筋細胞の役割を明らかにすることである。現在までに、下肢虚血組織下の骨格筋特異的STAT3-KOマウスにおいて炎症性サイトカイン、ケモカイン、血管新生が抑制され、骨格筋細胞の隙間や血管周囲に浸潤している炎症細胞にIL1betaのmRNA発現が、骨格筋特異的STAT3-KOマウスはControlマウスに比べ、少ないことを明らかにしている。下肢虚血における、血行改善の経路において、炎症経路や骨格筋細胞に何らかの関連があり重要であることを見いだしている。
今後、下肢虚血組織下の血管新生における、骨格筋細胞の役割に重要と考えられる炎症細胞の関与について解析し、骨格筋細胞のシグナル伝達とその制御に関するメカニズムの解析を進める。骨格筋組織における炎症細胞評価を、免疫染色、ウエスタンブロット法などで行う。また、骨格筋細胞のシグナル伝達とその制御に関するメカニズムを、マイクロアレイ解析を行い、In situ hybridization法により、血管新生因子の発現細胞の同定を行っていく。骨格筋特異的SOCS3-KOマウスを用いて下肢虚血モデルを作成し、血管新生促進が認められた場合は、新たな血管新生の手法として、直接導入法もしくはナノ粒子をキャリアに用いたSOCS3-shRNAのマウスの骨格筋への導入を行い、下肢虚血における骨格筋の再生と血管新生について評価を行い効果を検証する。
遺伝子改変マウスの飼育管理費用、生化学・分子生物学・組織学的な消耗品の購入。学会の交通費と宿泊費、論文校正費用などに使用する予定。
すべて 2012
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (4件)
J Am Coll Cardiol
巻: 59 ページ: 838-852
Hypertens Res
巻: 35 ページ: 1063-1068
Int J Cardiol
巻: 167(3) ページ: 1059-1061
10.1016/j.ijcard.2012.10.076