研究概要 |
マウス下肢虚血モデルを作成し、生理学的、組織学的、分子生物学的データの収集を行った。 ①下肢血流の評価。②モデル作成後、大腿の骨格筋を回収し、HE染色を行い、骨格筋障害、骨格筋再生、炎症細胞浸潤などについて評価。③モデル作成後、骨格筋を回収し、P-STAT3, P-AKT, P-ERK1/2, PAMPK,SOCS3をウエスタンブロットで評価。また、P-STAT3の免疫染色を行い、局在性を評価した。④CD31で免疫染色を行い、毛細血管の数を測定。⑤血管新生関連遺伝子、サイトカイン関連遺伝子を網羅的にリアルタイムPCRアレイによる発現遺伝子の解析を行った。 以上より、下肢虚血における骨格筋の再生、血管新生の過程において、STAT3に関連する炎症性サイトカイン、ケモカイン、血管新生因子の活性化を認めた。次に骨格筋特異的STAT3-KOマウス(以下KOマウス)においても評価を行い、前述の項目についてコントロールと比較評価した。KOマウスにおいて炎症性サイトカイン、ケモカインが抑制され血管新生が抑制されていることが考えられた。炎症性サイトカインで血管新生にも重要であるIL1betaの発現細胞を明らかにする為に、In situ hybridizationを行いIL1beta mRNAの発現を調べたところ、コントロールの下肢虚血24時間後の組織において、骨格筋細胞の隙間や血管周囲に浸潤している炎症細胞にIL1betaのmRNA発現を認めた。KOマウスでは、コントロールと比較して、IL1beta陽性細胞数は少ない印象であり、血行改善の経路において、炎症経路が何らかの関連があり重要である事が分かった。 初期免疫応答に差が無いか、調べる方針としNF-kBをウエスタンブロットや免疫染色で評価行っているが、現段階では明らかな結果は出ていない。可能であれば実験の追加を検討し、メカニズムを確認したい。
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