日本においても近年、生活様式の欧米化に伴うメタボリックシンドローム患者の増加で、飲酒歴のない脂肪化を伴う慢性肝疾患(NAFLD)が注目を浴びるようになった。NAFLDは、単純性脂肪肝と非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)に大別されるが、NASHはその組織学的形態も単純性脂肪肝と大きく異なり最終的に肝硬変や肝がんへと進行する可能性も高い。NASH肝は正常肝に比べて肝再生能が劣ることが臨床的な知見からは示唆されているが、その機序に関しては未だ不明な点が多い。そこで、本研究では新規のNASH動物モデルを用いて、正常肝とNASH肝の再生メカニズムの違いを明らかにすることを目的とした。二種類の新規NASHモデルマウス候補を検討した結果、OSMレセプターノックアウトマウスに対するコリン欠乏食負荷モデルは、系として安定しないことが分かった。一方、野生型マウスへのコリン欠乏アミノ酸制限食食餌モデルは、長期にわたる解析の結果、組織学的変化からNASHモデルとして妥当であると考えられた。このNASHモデルマウスに対し70%肝切除を施行したところ、正常肝と比較しNASH肝では顕著に肝再生が障害されていた。その要因の一つとして血球系細胞に着目してFACS解析をおこなったところ、新たな分画において正常肝とNASH肝に差異があることを見出した。
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