研究課題
本研究においては、教室において外科的切除術を施行した膵管内乳頭粘液性腫瘍(Intraductal papillary mucinous neoplasm; IPMN)と通常型膵癌を対象として研究を進めてきた。切除標本からDNAを抽出し、血管内皮増殖因子(Vascular Endothelial Growth Factor:VEGF)の一塩基多型(Single Nucleotide Polymorphism:SNP)として、「C-460T」、「G+405C」のそれぞれを調査することにより、発癌における影響だけでなく、臨床病理学的因子との相関を解析するものである。これまでに、膵癌細胞株と膵良性腫瘍細胞株を使用してVEGF SNPを測定し、引き続き、教室における膵癌とIPMN症例の臨床検体を用いることにより、解析を試みた。108例の膵癌症例、169例のIPMN症例の「C-460T」、「G+405C」をそれぞれ測定し、生存成績、臨床病理学的因子との相関を解析した。その結果、IPMN症例においては「405C」のVEGF遺伝子多型を有する症例は有意に悪性症例に多く認められることが判明した。また、IPMN症例における分枝膵管型IPMNや胃型IPMN症例においては、「405C」の頻度が有意に高いことが分かった。しかしながら、術後生存成績との相関を解析したところ、VEGF SNPとの有意な相関は指摘できなかった。一方、膵癌切除症例においても同様の研究を施行した。その結果、IPMN症例とは同じ膵疾患であるにも関わらず、VEGF SNPの分布に明らかな相違があることが判明した。ただし、膵癌における臨床病理学的因子や予後との相関は認められなかった。以上の研究結果より、VEGF SNPはIPMN症例が良性から悪性転化する際の発癌過程に関与していると考えられ、特に、分枝膵管型IPMNや胃型IPMN症例においてはより顕著であった。本研究の研究成果については、論文報告を行った。
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