研究課題/領域番号 |
24791410
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
伊藤 孝司 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10378656)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 肝移植 / 肝細胞癌 / mTOR阻害剤 / 免疫抑制 |
研究概要 |
肝細胞癌の肝移植後の再発は非常に大きな問題である。肝移植の場合、通常の肝細胞癌再発とは異なり、免疫抑制剤内服の影響により、腫瘍細胞の増大時間が異常に早く、また肝細胞癌に対する抗癌化学療法は、難治性であり、再発予防がきわめて重要であると考えられる。また、ミラノ基準を越えた肝細胞癌症例では、当施設での成績では術後の再発率が約34%であり、再発の危険性が高くなる。これまでの研究結果を踏まえ、肝細胞癌における再発リスクを抑える基準としてKyoto基準を提唱し、再発リスクの軽減に努めているが、ミラノ基準内でも再発する症例を認め、再発予防が非常に重要と考えられる。そこで、免疫抑制作用もあり、抗腫瘍効果もあるmTOR阻害剤であるエベロリムスによって、腫瘍細胞増殖や血管新生を抑制し、肝細胞癌の再発予防ができると考え、本研究を遂行しているものである。 平成24年度には肝細胞癌に対して5例の肝臓移植手術を行った。術後経過が良好な症例は3例認めており、現在外来にて経過順調である。また、すべての症例では進行肝癌症例ではなく、ミラノ基準を満たす症例であり、再発の危険性は非常に低いと考えられる。現在は外来での再発兆候を胸部腹部CTや、腫瘍マーカーで追跡中しており、再発は認めていない。さらに肝移植後、摘出肝病理組織検査において肝細胞癌の分化度、進行度、腫瘍径、個数などを評価し術後の再発因子を解析し、症例の積み重ねを行っているところである。さらに移植免疫学的なアプローチとして、移植後のCD4、CD8、CD25陽性T細胞や、制御性T細胞、CD20陽性B細胞、CD56陽性NK細胞などをflow cytometryで測定を行い、免疫学的な変化を観察している。また、これまでの研究成果などを学会などで研究報告も行っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度は当院の規定により肝臓移植手術プログラムが一時的に中断していた時期があり、手術症例の積み重ねが思うように増加しなかった点が一番遅れている原因である。しかし、現在肝移植プログラムも再開し、通常の肝移植手術を行っており、順調に症例を積み重ねている。ただ、これまでの症例に関しては症例の検討を行い、再発の危険性、さらに移植免疫学的なアプローチとして、移植後のCD4、CD8、CD25陽性T細胞や、制御性T細胞、CD20陽性B細胞、CD56陽性NK細胞などをflow cytometryで測定を行い、免疫学的な変化の観察などの解析を行ってきており、新規の症例の積み重ねのみ遅れている状態である。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度の研究計画として、肝移植手術の積み重ね、また、肝細胞癌患者における生体肝移植術前の評価として、ダイナミックCTにおいて肝細胞癌の進行度の評価とともに、肝細胞癌の分化度の解明として、FDG-PETにおいて低分化型肝細胞癌の評価を行う。術前の評価項目として血液中のAFP、AFP-L3分画、PIVKA-II、画像上の肝細胞癌の腫瘍径、個数などの腫瘍因子が術後の肝細胞癌の再発にどのように影響を及ぼすかを研究する。また、肝移植後、摘出肝病理組織検査において肝細胞癌の分化度、進行度、腫瘍径、個数などを評価し術後の再発因子を解析する。 さらに移植免疫学的なアプローチとして、移植後のCD4、CD8、CD25陽性T細胞や、制御性T細胞、CD20陽性B細胞、CD56陽性NK細胞などをflow cytometryで測定を行い、免疫学的な変化を観察する。 さらにmTOR阻害剤の効果をより詳細に検証するために、ラットでの肝癌移植モデルを用い、再発予防、免疫抑制剤との相関関係、免疫学的アプローチにより再発予防機序の研究解析などを行う予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費の使用計画であるが、本年同様に免疫学的アプローチによる研究のため、実験試薬に使用し、また、in vivo、in vitroでの実験のための試薬、培地、また動物実験での検証のための費用などに使用予定である。 また、本年は軽度の予算が残存し、一部を次年度に繰り越し、使用する予定である。
|