研究課題/領域番号 |
24791410
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
伊藤 孝司 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 非常勤講師 (10378656)
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キーワード | 肝移植 / 肝細胞癌 / mTOR阻害剤 / ラット肝癌モデル |
研究概要 |
肝細胞癌の肝移植後の再発は非常に大きな問題である。肝移植の場合、通常の肝細胞癌再発とは異なり、免疫抑制剤内服の影響により、腫瘍細胞の増大時間が異常に早く、また肝細胞癌に対する抗癌化学療法は、難治性であり、再発予防がきわめて重要であると考えられる。また、ミラノ基準を越えた肝細胞癌症例では、当施設での成績では術後の再発率が約34%であり、再発の危険性が高くなる。これまでの研究結果を踏まえ、肝細胞癌における再発リスクを抑える基準としてKyoto基準を提唱し、再発リスクの軽減に努めているが、ミラノ基準内でも再発する症例を認め、再発予防が非常に重要と考えられる。そこで、免疫抑制作用もあり、抗腫瘍効果もあるmT OR阻害剤であるエベロリムスによって、腫瘍細胞増殖や血管新生を抑制し、肝細胞癌の再発予防ができると考え、本研究を遂行しているものである。 平成24年度には肝細胞癌に対して8例、平成25年度には5例の肝臓移植手術を行った。術後経過が良好な症例は10例認めており、現在外来にて経過順調である。また、すべての症例では進行肝癌症例ではなく、ミラノ基準を満たす症例であり、再発の危険性は非常に低いと考えられる。現在は外来での再発兆候を胸部腹部CTや、腫瘍マーカーで追跡中しており、再発は認めていない。さらに肝移植後、摘出肝病理組織検査において肝細胞癌の分化度、進行度、腫瘍径、個数などを評価し術後の再発因子を解析し、症例の積み重ねを行っているところである。また、これらの症例において、術後の安定期よりmTOR阻害剤の内服を開始しており、今後、外来にての再発の有無などの経過の追跡が必要である。 また、基礎的研究として、ラットでの肝癌モデル作成に成功し、肝癌発生の機序、mTOT阻害剤の効果の有無の検討も同時に進行している状態である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一昨年度は当院の規定により肝臓移植手術プログラムが一時的に中断していた時期があり、手術症例の積み重ねが思うように増加しなかった点が一番遅れているこのともあったが、現在肝移植プログラムも再開し、通常の肝移植手術を行っており、これまで13例の肝癌症例に対して肝移植術を行い、順調に症例を積み重ねている。これまでの症例に関しては症例の検討を行い、再発の危険性、さらに移植免疫学的なアプローチとして、移植後のCD4、CD8、CD25陽性T細胞や、制御性T細胞、CD20陽性B細胞、CD56陽性NK細胞などをflow cytometryで測定を行い、免疫学的な変化の観察などの解析を行ってきており、今後のさらなる症例の積み重ねが必要である。 また、基礎的研究では、これまでの報告によると、rat HCCモデルにはNovikoff model(N)とMorris model(M)があり、Nは発癌率が低く肝内・肝外転移しない、またMはrat (Buffalo rat)が日本では入手不可能である。そのため、今回我々の研究では、Novikoff modelの発癌率を上げ、転移するモデルを作る必要があり、70% partial hepatectomyと15 minutes' warm ischemia (IR injury)を加えることで理想的なrat HCC modelを完成することができた。現在、部分肝切除およびIR injuryが実際どの経路を動かしているのかを解析中で、それが解明されれば、mTORiを投与することでその経路の抑制・亢進を調査している最中である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度の研究計画として、肝移植手術の積み重ね、また、肝細胞癌患者における生体肝移植術前の評価として、ダイナミックCTにおいて肝細胞癌の進行度の評価とともに、肝細胞癌の分化度の解明として、FDG-PETにおいて低分化型肝細胞癌の評価を行う。術前の評価項目として血液中のAFP、AFP-L3分画、PIVKA-II、画像上の肝細胞癌の腫瘍径、個数などの腫瘍因子が術後の肝細胞癌の再発にどのように影響を及ぼすかを研究する。また、肝移植後、摘出肝病理組織検査において肝細胞癌の分化度、進行度、腫瘍径、個数などを評価し術後の再発因子を解析する。さらに移植免疫学的なアプローチとして、移植後のCD4、CD8、CD25陽性T細胞や、制御性T細胞、CD20陽性B細胞、CD56陽性NK細胞などをflow cytometryで測定を行い、免疫学的な変化を観察する。 また、臨床でも現在mTOR阻害剤の投与を開始しており、再発の有無の経過観察を行っているところである。 さらにmTOR阻害剤の効果をより詳細に検証するために、ラットでの肝癌移植モデルを用い、現在では肝癌モデルの完成に成功し、その癌発生における経路において、どの部分を抑制すれば、癌の再発予防、免疫抑制剤との相関関係があるのかを解明でき、現在その実験も遂行中である。
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次年度の研究費の使用計画 |
各当年度では研究の進行も特に遅れることもなく、経過したが、実験での使用した金額は予想以上に、使用することなく研究の遂行が可能であった。しかし、26年度は最終年であり、全体の総括、研究発表などの予定も多数あり、繰り越し金額を使用する可能性も高くなると予想される。 使用計画として、臨床研究では、総括のまとめ、また論文作成、学会発表により費用を使用する予定である。また、基礎的研究として、さらなる実験も必要であり、消耗品、実験器具、実験試薬などへの使用、その結果解析のための費用、学会発表などに使用する予定である。
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