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2013 年度 実施状況報告書

可溶性IL-33受容体の大腸がん転移抑制効果と予後予測因子としての有用性の検討

研究課題

研究課題/領域番号 24791422
研究機関島根大学

研究代表者

秋元 美穂  島根大学, 医学部, 助教 (60437556)

キーワード転移抑制 / がん微小環境
研究概要

研究計画に基づき、ヒトリコンビナントsST2による転移抑制効果、sST2の大腸がん予後予測因子としての応用について検討した。加えてsST2のリガンドであるIL-33は炎症性のサイトカインであることから、がん細胞由来のsST2が炎症性のがん微小環境に及ぼす影響についても検討し、以下の結果が得られた。
①ヒトリコンビナントsST2(hrsST2)による転移抑制効果の検討:hrsST2を注入した徐放性のポンプをヌードマウスの背部皮下に埋め込むことで、血中のhrsST2レベルの上昇が認められた。このヌードマウスにヒト大腸がんSW620細胞(高転移性、sST2低発現)を移植した結果、腫瘍の増殖および肺転移が抑制された。このことからhrsST2がヒト大腸がんの転移抑制に有効であることが示唆された。
②sST2の大腸がん予後予測因子としての応用についての検討:同一の大腸がん患者由来の原発巣と肝転移巣のパラフィン包埋組織標本を抗ST2抗体で染色した結果、原発巣でのST2発現が有意に高いことが示された。これにより、臨床検体においてST2が転移予測の指標となり得ることが示唆された。
③がん細胞由来のsST2が炎症性のがん微小環境に及ぼす影響についての検討:マウス腫瘍におけるサイトカイン及びケモカインの遺伝子発現をPCRアレイで解析した結果、腫瘍中のTh2サイトカインの発現レベルはがん細胞のsST2発現レベルと逆相関することを見出した。このことから、がん細胞由来のsST2は炎症性のがん微小環境を変化させることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

ヒトリコンビナントsST2による転移抑制効果、sST2の大腸がん予後予測因子としての応用について検討を進め、当初の計画に即して研究を展開している。また、研究計画に挙げていたsST2発現によるがん細胞の遊走能・浸潤能抑制の機序についても現在解析を進めている。当該年度においては、がん細胞由来のsST2が炎症性のがん微小環境を変化させることを明らかにしており、sST2の転移抑制効果の機序の解明にも繋がる新たな進展があった。したがって、本研究は概ね順調に進展していると判断した。

今後の研究の推進方策

①sST2発現に伴う大腸がん細胞の遊走能・浸潤能の抑制機構の解明: sST2の発現に伴う大腸がん細胞の遊走能・浸潤能の低下の機序について解析中である。大腸がん細胞の遊走能・浸潤能がIL-33/ ST2Lオートクライン機構による制御を受け、sST2で抑制される可能性について引き続き検討する。また、IL-33は核内因子として様々な遺伝子の発現を制御するので、細胞内でsST2がIL-33依存性の遺伝子発現制御を介して大腸がん細胞の遊走能・浸潤能に影響を及ぼす可能性についても検討する。
②sST2の大腸がんの予後予測因子としての応用の検討:前年度に引き続き、より多くの大腸がん患者の血清サンプルについてsST2濃度と臨床データとの相関を検討する。また、既存の大腸がんパラフィン包埋組織標本を用いてsST2の発現レベルと原発巣のステージ及び転移の有無との相関を調べる。
③ヒトリコンビナントsST2(hrsST2)による転移抑制効果の検討:ヒト大腸がん細胞に対するhrsST2の転移抑制効果がin vivoで認められたので、転移抑制剤への応用を視野に、より有効かつ効果的なhrsST2の作製を試みる。そのために、数種のhrsST2を作製し、高転移性のヒト大腸がん細胞を移植したマウスに腹腔内投与して、血中での到達濃度や転移抑制効果を評価する。
④sST2が炎症性のがん微小環境に及ぼす影響の検討:腫瘍内でのTh2サイトカインの発現レベルはがん細胞のsST2発現レベルと逆相関することを新たに見出した。sST2が炎症性のがん微小環境に及ぼす影響を検討するため、特に腫瘍組織内のM2マクロファージの誘導に対する影響を中心に、sST2と腫瘍内のストローマ細胞との関係の解析を進める。

次年度の研究費の使用計画

当該年度から翌年度にかけて進行中の研究計画があり、年度の移行期にも円滑に研究が進められるように考慮し、研究費の使用額を計画的に調整したため、次年度使用額が生じた。
当初の研究計画に基づき、現在進行中の研究に必須の消耗品(細胞培養器具、一般試薬、実験動物)、翌年度参加予定の学会の旅費、研究成果発表のための論文校閲などの費用に使用する。また研究過程において、sST2の転移抑制効果の機序の解明にも繋がる新たな進展があった。より詳細な解析を進めるためには、多くのFACS用抗体やサイトカイン等が必要なので、これら消耗品の購入に使用する計画である。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2013 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Attenuation of reactive oxygen species by antioxidants suppresses hypoxia-induced epithelial-mesenchymal transition and metastasis of pancreatic cancer cells2013

    • 著者名/発表者名
      Shimojo Y, Akimoto M, Hisanaga T, Tanaka T, Tajima Y, Honma Y, Takenaga K.
    • 雑誌名

      Clin Exp Metastasis

      巻: 30(2) ページ: 143-54

    • DOI

      10.1007/s10585-012-9519-8.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Antitumor effect of Japanese apricot extract (MK615) on human cancer cells in vitro and in vivo through a reactive oxygen species-dependent mechanism2013

    • 著者名/発表者名
      Hattori M, Kawakami K, Akimoto M, Takenaga K, Suzumiya J, Honma Y.
    • 雑誌名

      Tumori

      巻: 99(2) ページ: 239-48

    • DOI

      10.1700/1283.14199.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] An inhibitor of HIF-α subunit expression suppresses hypoxia-induced dedifferentiation of human NSCLC into cancer stem cell-like cells2013

    • 著者名/発表者名
      Akimoto M, Nagasawa H, Hori H, Uto Y, Honma Y, Takenaga K.
    • 雑誌名

      World J Med Genet

      巻: 3(4) ページ: 41-54

    • DOI

      10.5496/wjmg.v3.i4.41.

    • 査読あり
  • [学会発表] Soluble ST2 inhibits tumor growth and metastasts of colon carcinoma cells by modulating inflammatory microenvironment2013

    • 著者名/発表者名
      Miho Akimoto, Yoshio Honma, Keizo Takenaga
    • 学会等名
      第72回 日本癌学会学術総会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(横浜)
    • 年月日
      20131003-20131005
  • [学会発表] 可溶性IL-33受容体ST2による炎症性微小環境の修飾を介した大腸がんの転移の抑制2013

    • 著者名/発表者名
      秋元美穂、竹永啓三
    • 学会等名
      第22回 日本がん転移学会学実総会・集会
    • 発表場所
      ホテルブエナビスタ松本(松本)
    • 年月日
      20130711-20130712
  • [備考] 島根大学 医学部 生命科学講座 腫瘍生物学

    • URL

      http://www.med.shimane-u.ac.jp/llt/index.html

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公開日: 2015-05-28  

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