本研究は、CAF(癌関連線維芽)細胞の癌進展におけるその重要性からCAF自体を制御し抗腫瘍効果を期待する新たなコンセプトを有する抗がん治療の提案を目的とする。手法はCAFの特異的表面抗原を用いた抗体療法にてその抗腫瘍効果を検討した。初年度は食道癌における臨床病理学的検討を行い、CAF特異的抗原を標的とした抗体療法の確立を行った。順にP1:食道癌の切除標本におけるCAFの発現の臨床病理学的検討、P2: CAFと癌細胞の相互作用をin vivoにて検討、P3:特異的表面マーカーを設定するにあたり、より特異度の高いFAPの発現の解析を行った。いずれも仮説通り癌細胞とCAFの強い相関関係を確認しまた表面抗原としてのFAPの特異性や抗体療法の標的としての可能性を示した。さらにFAPを標的とした光線免疫療法(PIT)を用いてCAFの細胞死を誘導する実験を行った。in vitroにおいて90%以上の抗CAF効果を確認した。平成25年度にはその抗体療法の選択的抗CAF細胞効果やその抗腫瘍効果の検討を行った。実際にFAP発現を認めない癌細胞においては殺傷能力を持たず、選択的にCAFのみを標的とすることを確認した。またin vivoにおいてもPITを用いた群においてはCAFによる腫瘍増殖促進作用は制御出来た。現在はCAFの腫瘍細胞の治療抵抗性との関係を明らかにし、CAFを制御することで標準的な化学療法の抗腫瘍効果の改善を解析する方針で研究を行っている。
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