研究概要 |
本年度は、ヒト大腸癌細胞株を用いて、JAB1とSTAT3, JAB1とHIF-1αの蛋白質間相互作用やJAB1ノックダウンによるSTAT3, HIF-1α活性(標的DNAに対する結合能や標的遺伝子の発現量)の変化、さらに抗癌剤抵抗性の変化を検討した。まず、ヒト大腸癌細胞株の核抽出液を準備し、ウェスタンブロット法により核内におけるJAB1, STAT3およびHIF-1α蛋白質の発現を確認した。さらにその核抽出液を用いた免疫沈降によりJAB1とSTAT3, JAB1とHIF-1αの蛋白質間相互作用が認められた。次にJAB1に対するsiRNAを用いてJAB1の発現抑制を行い、ゲルシフトアッセイによりSTAT3およびHIF-1αの標的DNAに対する結合能を検討したところ、STAT3およびHIF-1αの標的DNA結合能の減少が認められた。さらに、これらの転写因子の標的遺伝子であるc-Myc, Bcl-2, Oct4, MRP-1の発現量の減少も認められた。最後に抗癌剤誘導性のアポトーシスにおけるJAB1発現抑制の効果を検討したところ、JAB1ノックダウンにより抗癌剤誘導性のアポトーシスが増強されることが観察された。 以上の結果より、核内においてJAB1がSTAT3およびHIF-1αと結合し、それらの標的DNAに対する結合を安定化させることによって標的遺伝子の発現を誘導し、抗癌剤抵抗性の獲得に貢献していることが示された。
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