研究概要 |
本年度は、ヒト大腸癌細胞株を用いて、JAB1ノックダウンによるSTAT3標的DNA結合能および核内STAT3、細胞質STAT3の発現レベルの変化を検討した。その結果、JAB1ノックダウンにより、STAT3標的DNA結合能の減弱が認められた。一方、核内STAT3、細胞質STAT3の発現レベルは増加傾向にあった。さらにSTAT3標的遺伝子(MDR1, NANOG, VEGF)の発現レベルの低下が認められた。またヒト大腸癌細胞株COLO-205およびLoVoを用いた検討により、核内JAB1の発現レベルとSTAT3標的DNA結合能との間に相関性が認められたが、核内STAT3の発現レベルとSTAT3標的DNA結合能との間には相関性が認められなかった。以上より、STAT3標的DNA結合能は核内STAT3の発現レベルではなく、核内JAB1の発現レベルによって決定されている可能性が示唆された。さらに、JAB1ノックダウンによる抗癌剤抵抗性の変化を検討したところ、JAB1ノックダウンにより抗癌剤誘導性のアポトーシスが増強されることが観察され(切断型PARP1の量をアポトーシスの指標とした)、抗癌剤処理後の細胞生存率の減少も認められた。さらに複数の大腸癌細胞株を用いた検討により、細胞質JAB1ではなく、核内JAB1の発現レベルと抗癌剤処理後の細胞生存率との間に関連性があることが示唆された。以上の結果より、JAB1が抗癌剤抵抗性の獲得に貢献していることが明らかになった。
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