強力な肝再生抑制因子として知られるTransforming growth factor (TGF) -βの機能発現に術後早期におけるThrombospondin (TSP)-1を介した活性化機構が関与する基礎的実験結果に基づいて、TSP-1によるTGF-β活性化を阻害するペプチドの投与による肝再生促進療法の可能性についてin vivo (70%肝切除モデルマウス)で検討した。阻害ペプチド投与により術後6時間でのTGF-β-Smad signalの抑制が得られた。再生肝に対する効果としては、術後24時間における肝細胞へのBrdU取り込みが増加し、術後48時間での肝/体重比増加が促進された。さらには術後7日目での体重回復が促進された。ペプチド投与による副作用について、血液性化学検査およびH.E.を用いた組織学的検索を行ったが明らかなものはなかった。肝切除後再生肝では術後早期にTSP1が発現し、強力な肝再生抑制因子であるTGF-β シグナルの活性化を介して術後肝再生を負に制御しており、阻害peptideの投与によって肝再生促進効果が得られる可能性があり、臨床応用を目指す。
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