研究課題/領域番号 |
24791437
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
目黒 誠 札幌医科大学, 医学部, 助教 (50448601)
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キーワード | 肝切除術後肝不全予測 / フロートラックビジリオシステム / 術中リアルタイムモニタリング / 上大静脈内酸素飽和度(ScvO2) / stroke volume variation |
研究概要 |
肝切除術後に生じることのある肝不全は重篤な合併症であるが、肝切除術中にフロートラックビジリオシステムでモニタリングすることで、この肝不全を予測できないかを検討した。内頚静脈から上大静脈内にフロートラックを留置して上大静脈内酸素飽和度(ScvO2)を、橈骨動脈ルートを確保してビジリオセンサーに接続してstroke volume variation(SVV)、ならびに心拍出量(cardiac output)などをフロートラックビジリオシステムでモニタリングした。麻酔導入後1時間ほどの間のScvO2、SVV、COの平均値をBaselineと設定した。術中ストレスにより末梢循環不全や肝血流循環不全などによりScvO2は低下し、SVVは上昇する傾向がある。そこで、ScvO2最低値とBaseline ScvO2との差をΔScvO2と定義した。また、SVV最高値とBaseline SVVとの差をΔSVVと定義した。手術全体におけるScvO2ならびにSVVの平均値をmean ScvO2、mean SVVと定義した。術後病理組織学的検査で背景肝が正常肝症例でのみ、これらの新たに設定した指標と、術後総ビリルビン最高値との間に有意な相関関係が認められた。術後総ビリルビン値の最高値が3.0 mg/dL以上を呈したものを術後肝機能障害として検討したところ、ΔScvO2が10.2%以上、mean SVVが13.4%以上のときに術後総ビリルビン最高値が3.0 mg/dL以上となる可能性が有意に高いことが示された。つまり、フロートラックビジリオシステムにより術中モニタリングをすることでリアルタイムに循環動態が把握でき、これらの新たな指標をみながら術中に早期に全身管理に介入することによって術後の肝機能障害や肝不全を予防できる可能性が示唆され非常に有意義な結果が導き出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
肝切除術中にリアルタイムにモニタリングして測定した結果から、術後の肝機能障害(総ビリルビン値上昇)を予測できる可能性があるという結果をSurgery誌に掲載できた。また、豚を用いた研究では、肝切除+脱血モデルを作成でき、非脱血豚と脱血豚とでモニタリングを実際に施行できた。さらにこれらの結果を最終的にまとめて追加の論文発表に繋げたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの結果を検討して解析を行い、英語での論文発表を目指して、英文校正などを綿密に施行していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験の遂行、ならびに研究の解析と論文発表のためのまとめをしている状況でしたが、データの解析の都合上、統計ソフトの新たな購入の必要性が発生しました。年度内で解析を終了することができず、今後必要になったときに使用したい研究費があると判断しましたので今回、未使用研究費が発生しました。 次年度では、データのまとめの中で、論文発表のための英文校正費用や、データ解析のためのアプリケーションなどの消耗品の購入などに使用する予定です。
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