肝切除術中にフロートラックビジリオシステムでモニタリングすることで肝切除後の肝不全を予測できないかを検討した。 上大静脈内酸素飽和度(ScvO2)ならびにstroke volume variation(SVV)をフロートラックビジリオシステムでモニタリングした。麻酔導入後1時間ほどの間のScvO2、SVV、COの平均値をBaselineと設定した。術中ストレスにより末梢循環不全や肝血流循環不全などによりScvO2は低下し、SVVは上昇する傾向がある。そこで、ScvO2最低値とBaseline ScvO2との差をΔScvO2と定義した。手術全体におけるSVVの平均値をmean SVVと定義した。 これらの新たに設定した指標と、術後総ビリルビン最高値との間に有意な相関関係が認められた。術後総ビリルビン値の最高値が3.0 mg/dL以上を呈したものを術後肝機能障害として検討したところ、ΔScvO2が10.2%以上、mean SVVが13.4%以上のときに術後総ビリルビン最高値が3.0 mg/dL以上となる可能性が有意に高いことが示された。 つまり、フロートラックビジリオシステムにより術中モニタリングをすることでリアルタイムに循環動態が把握でき、これらの新たな指標をみながら術中に早期に全身管理に介入することによって術後の肝機能障害や肝不全を予防できる可能性が示唆され非常に有意義な結果が導き出された。 平成26年度(最終年度)には、これまでの研究してきた研究実績を踏まえて、学会発表や論文発表を中心にデータをまとめることができた。
|