研究課題
本研究はMMP7とCDX2が胃癌リンパ節転移に関連しているという、われわれが以前に報告した研究に基づいているものであり、この遺伝子発現を制御し得るマイクロRNAを見出し、そしてその胃癌リンパ節転移における役割を解明していくものである。昨年度は標的遺伝子を制御しうるマイクロRNAの選定を公開データーベースを用いておこなった。用いた公開データーベースは、MicroCosm Targets Version5、TargetScan、PicTar、MiRwalkである。これらはおのおの異なった予測モデルを用いているため、予測されるマイクロRNAはデーターベースによって異なる。そのため、それらのアルゴリズムでの予測が多く重なったマイクロRNAを複数個用いて、細胞実験をおこなうことにした。細胞実験の概要についてだが、マイクロRNAは標的とするメッセンジャーRNAを抑制することにより作用を発揮するので、その相補性に基づいて予測されたマイクロRNAを細胞に強制発現させることで標的の挙動を観察することである。その系において、miR-181bを強制的に発現させることによって、その標的となるCDX2の発現が有意に低下することが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
胃癌のリンパ節転移に関連する遺伝子の選定とその遺伝子を標的とするマイクロRNAの同定、さらにはそのマイクロRNAを強制発現させる細胞実験系を確立できたこと、さらには臨床検体の選別や臨床情報を集めたことが挙げられる。
当初の予定通り、データーベースを基に探索したマイクロRNAとメッセンジャーRNAの関係を、細胞実験で確認したので、次にそれらの関係が実際の臨床検体でも認められるかどうかを確認する。臨床検体の年齢や性別といった臨床因子と病理組織学的因子、さらには全生存期間と無再発生存期間の情報を収集し得たものを用いる。検討にあたっては検出セットと検証セットという、臨床病理学的に有意な差がない2つの独立した群を用いる予定である。また、発現が腫瘍において有意に上昇していたマイクロRNAについては、当初の予定通りIn situ hybridizationにて発現解析が行えるかを確認する。
前年度までは、公開データーベースを用いてCDX2を標的とし得るマイクロRNAの探索、細胞実験と臨床検体の臨床病理情報を収集することを主におこなった。当初の予定通り物品費の多くは臨床検体を用いてのマイクロRNAの解析に当てられ、次年度に使用する予定である。次年度では実際の臨床検体を用いてマイクロRNAの解析をおこなう。そのために、検体からのRNAの抽出や半定量的PCR法にてマイクロRNAの発現解析をおこなう予定である。数多くの検体に対して、RNA抽出キット、半定量的PCRに用いるプローベやマスターミックスを使用する予定である。さらに、臨床検体でのマイクロRNAの発現をIn situ hybridizationでも見る予定であるが、いまだ実験手技が確立していないので、市販のキットを含む複数の異なった実験手技を検討するのに研究費を使用する予定である。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件)
Cancer Research
巻: 73(13) ページ: 3821-31
10.1158/0008-5472
International Journal of Cancer
巻: 132(1) ページ: 9-18
10.1002/ijc.27644