研究実績の概要 |
1q増幅領域に坐位し、食道扁平上皮癌で高発現しかつ細胞増殖に関わる新規の癌関連遺伝子としてSMYD2、TMEM206, DTLを同定した。①食道癌臨床検体を用いた蛋白発現解析、②発癌、悪性度に関する分子機構の更なる解明、③化学療法、化学放射線療法の感受性予測や耐性作用の解明、④遺伝子発現の診断マーカーとしての応用、⑤血中遊離DNAの遺伝子コピー数の定量による診断への応用、⑥他臓器癌の増殖・悪性度への関与の評価、を研究計画として研究を進めてきた。 今年度は②の機能解析とを主に行った。③の抗がん剤耐性との機序との関連は現在も解析中である。④⑤に関しては、血中での遊離DNAのバイオマーカーとしての意義を示すように試みたが、同じ増幅領域のSMYD2は示せたが、DTLやTMEM206遺伝子については現在まで示せていない。⑥に関しては、SMYD2遺伝子については、胃癌での分子機構と臨床的意義を英文誌に報告した(Komatsu S. et al. Br J Cancer 2015)。DTL遺伝子についても胃癌で英文誌に投稿中である。②の機能解析として、TMEM206遺伝子は、アジレント244K_CGHアレイでKYSE150株の1q増幅領域に存在することを明らかにした。FISH解析でもHomogenous staining regionをKYSE150株で確認した。mRNAの発現解析で、食道扁平上皮癌細胞株43株で60.4%(26/43)に過剰発現を認めた。高発現株KYSE150をTMEM206特異的siRNAによりノックダウンをしたところ72時間でコントロールに比し43%の著しい細胞増殖抑制を認めた。また、PARP誘導を確認した。また、FACS解析で高発現株1170株ではTMEM206ノックダウンにより、G1-Sアレストによる細胞周期停止を、KYSE590ではSub-G1の増加によりアポトーシスを認めた。低発現株のKYSE510、KYSE200に発現ベクターを導入し遺伝子を過剰発現させて、有意なコロニー形成を確認した。以上、1q増幅領域の遺伝子に関しては今後も解析に内外の学会、英文誌に報告の予定である。
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