研究課題/領域番号 |
24791443
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
右田 和寛 奈良県立医科大学, 医学部附属病院, 研究員 (40570990)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 食道癌 / 癌免疫療法 |
研究概要 |
in vitro実験系でのHVEMノックダウンによる抗腫瘍効果の確認と機序の解析。MTSアッセイでヒト食道癌株TE-1ならびにマウス大腸癌株Colon26においてヒト食道癌株TE-6と同様にHVEMノックダウンによる有意な細胞増殖抑制効果を確認し得た。次いで、HVEMノックダウンによる癌細胞増殖抑制効果の機序解明のためにフローサイトメトリーによる細胞周期解析を行った。結果、TE-1、TE-6ではG2/Mアレストが、Colon26ではG1アレストがHVEMノックダウンにより誘導されることが判明した。Annexin V/propidium iodide染色を行った結果、HVEMノックダウンではアポトーシスは誘導されなかった。以上のことから、HVEMノックダウンでは細胞周期停止により癌細胞の増殖が抑制されることが判明した。 in vivo実験系でのHVEMノックダウンによる抗腫瘍効果の確認と機序の解析。Colon26による大腸癌皮下モデルにおいて、HVEMノックダウンにより有意な抗腫瘍効果を確認し得た。摘出した腫瘍を免疫染色で検討したところ、HVEMノックダウン腫瘍ではコントロール治療を行った腫瘍に比べKi67陽性率が有意に低く、p27陽性率が有意に高かった。また、HVEMノックダウン腫瘍では腫瘍浸潤CD8+リンパ球数が有意に多かった。real-time PCRを行ったところ、INF-γやIL-2の発現がHVEMノックダウン腫瘍で有意に上昇していた。以上の結果から、HVEMノックダウンにより細胞周期停止による増殖抑制と腫瘍局所での抗腫瘍免疫が誘導されることが判明した。HVEMを標的とした治療では、腫瘍抗原特異的 T 細胞を活性化・誘導するだけではなく、直接的な抗腫瘍効果を得られる可能性があり、他のT細胞不活化経路阻害よりも強力な抗腫瘍効果が期待できるものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね当初の計画通りに進行している。しかしながら、免疫不全マウスでの抗腫瘍効果の確認には至らなかった。ヒト食道癌株を生着させることができなかったためである。次年度では他の細胞株を用いて行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
24年度の結果に基づいて、さらに臨床応用を目指した応用・発展的研究を行い、HVEM経路を標的とした治療の有用性を検証する。 HVEM経路阻害と既存化学療法との併用効果についての検討。HVEM経路阻害と現在臨床で使用されている化学療法剤(5-FU、Taxotel、Gemcitabineなど)との併用効果について、臨床を想定したin vivoの治療実験を行う。相乗効果が得られた場合には、最適な化学療法薬剤と阻害抗体との投与スケジュールを検討する。相乗効果の得られた抗腫瘍効果について、real-time PCRあるいはFACS解析等により、in vitroでの機序の解析を行う。さらに本研究では、分子標的薬(抗VEGF抗体、抗EGFR抗体、抗HER2抗体など)とHVEM経路阻害、化学療法との併用効果についても同様のモデルでの検討を行う。 HVEM経路阻害によるメモリーT細胞の誘導と腫瘍再発抑制効果についての検討。応募者は特に術前(腫瘍摘出前)の腫瘍抗原が豊富な段階で、HVEM経路阻害を行うことで、より効率的に腫瘍抗原特異的なメモリーT細胞が誘導されるのではないかと予想する。腫瘍接種の後、腫瘍径が10mm以上に達した時点から一定期間HVEM経路阻害治療(HVEM si-RNAあるいはモノクローナル抗体)を行う。その後に腫瘍を一旦外科的に完全切除する。対照群には、コントロール治療(scrambled RNAあるいはisotypeのコントロール抗体)を行う。切除後100日以上経過した時点で、元と同系の腫瘍およびそれとは異なる腫瘍を再接種する。仮に治療群で、同系の腫瘍のみが、生着しないかあるいは自然退縮するようであれば、in vivoにおいて、効果的なメモリーT細胞が誘導された可能性がある。脾臓やリンパ節を摘出し、機序をFACSで解析を行い、これを証明する.
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし。
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