研究課題
in vitroでの腫瘍にけるHVEMの役割の解明。RNA干渉法を用いて、HVEM発現のノックダウンを行った。MTSアッセイの結果、ヒト食道扁平上皮癌細胞株TE-1、TE-6、およびマウス大腸癌細胞株colon26いずれにおいても、HVEM発現ノックダウンにより細胞増殖が有意に抑制された。FACSによる細胞周期解析の結果、TE-1、TE-6ではG2/Mアレストが、colon26ではG1アレストがHVEMノックダウンにより誘導されることが判明した。colon26細胞はp53野生株であり、TE-1、TE-6はp53変異株であり、HVEMノックダウンによる細胞周期停止はp53に依存すると考えられた。また、HVEMノックダウンではアポトーシスは誘導されなかった。以上のことから、HVEMノックダウンでは細胞周期停止により癌細胞の増殖が抑制されることが判明した。in vivo実験系でのHVEMノックダウンによる抗腫瘍効果の確認と機序の解析。colon26細胞株による皮下モデルにおいて、HVEMノックダウンの効果を確認した。その結果、HVEMノックダウンにより有意な抗腫瘍効果を確認し得た。摘出した腫瘍を組織学的に検討したところ、HVEMノックダウン腫瘍は腫瘍内壊死面積が有意に増加していた。また、HVEMノックダウン腫瘍ではコントロール治療を行った腫瘍に比べKi67陽性率が有意に低く、p27陽性率が有意に高かった。また、HVEMノックダウン腫瘍では腫瘍浸潤CD8+リンパ球数が有意に多かった。real-time PCRを行ったところ、INF-γやIL-2の発現がHVEMノックダウン腫瘍で有意に上昇していた。以上の結果から、HVEMノックダウンにより細胞周期停止による増殖抑制と腫瘍局所での抗腫瘍免疫が誘導されることが判明した。HVEMを標的とした治療では、腫瘍抗原特異的 T 細胞を活性化・誘導するだけではなく、直接的な抗腫瘍効果を得られる可能性があり、他のT細胞不活化経路阻害よりも強力な抗腫瘍効果が期待できるものと考えられる。
すべて 2014
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Cancer
巻: 120 ページ: 808-817
10.1002/cncr.28491