研究課題/領域番号 |
24791445
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
北東 大督 奈良県立医科大学, 医学部附属病院, 研究員 (70526821)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 肝細胞癌 |
研究概要 |
(具体的内容) 肝細胞癌の新鮮凍結標本60症例からRNAを抽出し、cDNAを作成した。同cDNAを用いてReal time PCRを行い、RNAレベルでの検討を行った。具体的にはCD8、CD4、IFNγ、パーフォリン、グランザイムBについて検討した。結果はHVEMの発現群ではこれらいずれの発現も有意に低下していた。また、臨床病理学的背景とHVEMの発現とを検討したところ、腫瘍径とHVEM発現との間に有意な相関がみられた。肝細胞癌では腫瘍径は予後不良因子の一つであり、また遠隔転移との関連性も指摘されている。この機序の一つとしてHVEMの発現が関連している可能性が示唆された。また、さらに症例数を増加させ、適宜再検討を実施している。 (意義)以前パラフィンブロックから免疫染色を行った検討では肝細胞癌のHVEMの発現が腫瘍内浸潤リンパ球と逆相関し、予後不良因子となることを確認していた。今回の結果はRNAレベルでもHVEMの発現が腫瘍内浸潤リンパ球の浸潤、およびその機能を抑制していることを示している可能性が示唆された。また、巨大肝細胞癌の予後が不良となる要因としてHVEMの発現が関連している可能性が示唆された。 (重要性) 肝細胞癌のHVEMの発現が予後不良因子となることが示され、HVEMをターゲットとした新規治療の可能性が見いだされた。今後はさらに細胞レベル、動物モデルでのデータを得るよう検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
病理標本のパラフィンブロックでの検討に加えて、新鮮凍結標本からのRNAレベルの解析でもHVEMの発現が予後不良因子となりうることを確認した。今後はさらに細胞レベル・動物モデルのレベルで確認したいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
in vivoにおけるHVEM knock downの抗腫瘍効果の評価 マウス肝細胞癌細胞株(BNL-HCCなど)を同型マウスに皮下移植し,腫瘍を確立させる. HVEM siRNAをアテロコラーゲン局所投与用とともに,腫瘍に直接接種し,in vivoモデルにおけるHVEM knock downを試み,HVEM knock downによる抗腫瘍効果を経時的に比較する.また,HVEM knock down群とコントロール群で,腫瘍内浸潤T細胞,腫瘍局所における免疫活性を,免疫染色,リアルタイムPCR等で比較する. HVEMの新規バイオマーカーとしての意義を検討する. 術前後の肝細胞癌患者の血清中HVEMの発現をモノクロナール抗体を用いたFACSあるいはELISA法によって検討する.また,術後再発患者あるいは切除不能患者の血清を用いて同様の検討を行い,患者の予後あるいは各種血清学的,免疫学的パラメーターとの相関を検討して,新規バイオマーカーとしての有用性を明らかとする.
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次年度の研究費の使用計画 |
上記計画のため、ヒト肝細胞癌株、マウス肝細胞癌株の購入、および細胞培地の費用、マウスの実験環境の維持等に用いる予定である。
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