研究概要 |
本課題の当該年度における到達目標は、食道癌のシグナル伝達経路の中で特に重要であるPI3K-Akt passwayに関わる遺伝子・miRNAについて網羅的にプロファイリングを行った後、正常細胞株と癌細胞株とで両者を比較検討することである。まず、細胞株よりRNAを抽出しPI3K-Akt passwayに関連する遺伝子の定量的PCRを行った。その結果、癌遺伝子であるAktを抑制するPTEN(Phosphatase and Tensin Homolog Deleted from Chromosome 10)、ならびにAktの下流で細胞のアポトーシスを促すFOXO-1(Forkhead box protein O1)のmRNA発現量が食道扁平上皮癌細胞株において有意に低下していることを発見した。今度は、LNA array(Takara bio社 第7世代のマイクロアレイには、約3,100種類のプローブが搭載されており、miRBase ver. 18.0に登録されているヒト、マウス、ラットに加えて、これらの生物種に関連するウイルスのmicroRNAもカバーされている。さらに、miRBaseに登録されていない新規の25種類のヒトmicroRNAプローブが搭載されている)を施行しmiRNAの網羅的プロファイリングを行った結果、PTENを標的としうるmiR-141、miR-200の発現が食道扁平上皮癌細胞株において有意に高値であることが分かった。今後、さらにmiRNAの解析を進める予定であり、LNA arrayの結果を定量的PCRにて再確認する予定である。 一方、次年度の研究計画であるPI3K-Akt passwayに関わるmiRNAの過剰発現、抑制実験に使用するためのベクターを構築すべく、その条件検討、準備実験を行っているところである。
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