研究課題
我々は初年度の研究においてmiR-141、miR-200b、miR-200c、miR-205の発現が食道扁平上皮癌細胞株において有意に高値であることを明らかにした。また前年度の研究においてはPI3K-Akt-mTOR経路を阻害し、かつTargetScanデータベースにおいて前述のmiRNAの標的となる可能性を持つものを選抜した結果、miR-200bおよびmiR-200cの標的候補としてDNA damage-inducible transcript 4 protein(DDIT4)を、miR-141の標的候補としてPH Domain Leucine-Rich Repeat-Containing Protein Phosphatase 2(PHLPP2)を見出した。またDDIT4、PHLPP2の発現が食道扁平上皮癌細胞株上で有意に低下していることを明らかにした。本課題の当該年度における到達目標は、食道扁平上皮癌細胞株上で前述のmiRNAを強制発現することでDDIT4、PHLPP2の発現に影響を及ぼすかどうかを明らかにすることであった。miRNA強制発現によるDDIT4およびPHLPP2発現への影響を評価するため、正常食道扁平上皮株(Het-1a)にmiRNAを強制発現させ標的候補遺伝子の発現量をRT-PCRにより定量した。Het-1aに対するmiR-141の強制発現によりPHLPP2の発現低下が観察された。この結果がmiR-200bおよびmiR-200cの強制発現によるDDIT4の発現抑制と比べて大きいことから、PHLPP2発現とmiR-141発現との関係に研究対象を絞って詳細に調査することにした。この実験結果の再現性は確認されておりmiR-141がPHLPP2の発現を抑制する事が示唆された。今後はmiR-141がPHLPP2を直接のターゲットとするか確認するためにルシフェラーゼアッセイを用いた検証を行う予定である。
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巻: 376541 ページ: 1, 3